✎︎___

スタンレーの魔女 感想

2019.7.28〜8.8
DDD青山クロスシアター
『スタンレーの魔女』の感想です。
諸々の間違い、語彙のなさ等ご容赦ください。

✈︎
戦争真っただ中のお話でも、いちばん強く印象に残っているのは隊員たちの笑顔です。

✈︎
冒頭のシーンでの笑顔に早々涙腺をやられました。みんなが敷井を見ている中で、その表情もおだやかだったり満面の笑みだったりはにかむようなものだったり見守るようなものだったり、それぞれが敷井と敷井の夢をどう思っていたのかということが分かって、開始20秒くらいで泣きました。
石田中尉からはじまり、亡くなった順、飛び降りた順にも理由がありました。『笑っていなくなっていく』この最初の演出で、作品やお芝居に対する御笠ノさんの思いを垣間見たような気持ちになりました。
そして最後の演出と映像と音楽が圧巻で、敷井と同じ気持ちになって泣き叫びたくなります。

✈︎
冒頭とラストで響いてくるあのうつくしい歌声が、スタンレーの魔女の声のようにも聞こえますし、命を落とした者への鎮魂歌のようにも聞こえてきます。
プロペラの回る音が隊員たちの命の尽きるまでの音のように聞こえて、片肺になって完全に止まるまでの静寂の中に響くかすかな音を聞くのがたまらなくつらかったです。

✈︎
この舞台が映像に残らないというのも、いなくなってしまったらもう見ることも会うこともできない、ということと重なって泣けてきます。
生で観る機会は公演期間中だけであるのと同時に、公演期間が終わったらもうこの面々を見ることはできないんだなと、すでにさびしくて仕方ありません。

✈︎
のんびりゆるゆると過ごしている日常の中であっても、戦時中の焦燥や諦めや恐怖心という感情が登場人物たちからじわりと感じられました。しかしそれをひっくるめて包んで、常に誰かから誰かへの優しさを感じるお話になっているように思いました。

✈︎
敷井のまっすぐで澄んだ目がスタンレー山脈を見るときに、周りの空気も澄んでいるように感じました。敷井のもつロマンが周りにも伝播している気がしました。
みんながわちゃわちゃしているときに、ちょっとだけ控えめにわちゃわちゃの渦中にいるのがとてもなごみます。
石田中尉や後藤が亡くなったとき、とても悔しそうな悲しそうな表情をしているのが心に残っています。
機内から重量物を捨てていく場面で、長靴などを捨てるときにおいてもわちゃわちゃしてるのも涙腺にきますし、みんなの笑い声や冗談を聞きながら操縦している敷井がとっても良い顔で笑っていて、「孤独だから負けたのかもしれない」の台詞を思い出して、敷井が最後までみんなと一緒にいたということが胸にぐっときます。
空っぽになった機内でみんなの名前を呼びながら泣いている声が、観終わったあともずっと耳に響いていて、もちろん悲しさやつらさはあるのですが、うまく表現できない何とも言えない気持ちが残響のように残ります。

✈︎
出戻中尉がふと見せる諦念(とは違うかもしれません)に、中尉の今までの人生が見えてくるようで深みを感じます。
壊滅状態だという場面で言葉を発するのがつらそうなところや、つぎはぎの機体が完成してみんなが喜び合っている中で複雑な表情をしているところ(そのあと敷井に笑顔を向けるところ)でどうにも涙がでます。機体が完成してしまったら今こうして過ごしている部下たちを死地に向かわせることになるのを、色々な思いで見据えているんだろうなと思いました。
後藤の背中がいろんな奴に見えるというところで泣きそうになっているようにも見えて、中尉は今までさまざまなたくさんの仲間たちを見送ってきたんだろうなと感じます。
奥底の静かな威厳とともにとてもかわいらしいところもたくさんあって、仲間たちとわちゃわちゃしたり、敷井の勢いに自分も走り出してたり、酒瓶の口をスカーフ(?)で拭ったり、狭い部分を通って顔に付いたかもしれない錆(?)を気にしたり、海や川の水だったり、おたまじゃくしがかわいかったり、足立がわだちになったり、序盤でわけのわからないことを言いながらも後藤をしっかり諌めたり、みんなとバカやったり、そういう細かなきらきらした部分が人物像をさらに深めているように思いました。
最期に飛び降りるとき、足立と尾有に後を託したのかなと考えると、そのときの中尉の心情を思うとたまらない気持ちになります。

✈︎
大平がこの部隊の中核といいますか、ムードメーカー且つみんなのまとめ役で、そしてみんなのことをとても大好きなんだろうなと感じました。全員のことを好きでよく見ているからこそ、色々な反応がすぐにできたり、そこからさらに面白くなっていったりするんだろうなと、心にじんときます。
冒頭のシーンで、飛び降りる間際まで敷井に笑顔を向けていたんだなと思って涙がでました。
仲間が後藤にケンカを売られて、自分を悪く言われたわけではないのに怒りを爆発させているのも仲間想いな性格があらわれていて好きです。
熊田のこともトイレでしなさいと言いつつも、きっと許しているのかもしれないなと思います。大平のツッコミにあたたかさを感じて、仲間への言葉ひとつひとつに優しさを感じます。
たくさん面白い動きや台詞があって、それに仲間たちが呼応して話が進んでいくところが自然で、目の前に登場人物そのものが生きているように見えました。

✈︎
葉っぱで投下訓練していたり、昆虫大好きだったり、少年感のある流山がとてもかわいかったです。そしてとても心の優しい人物なのだと思いました。
天真爛漫で無邪気なふるまいの中に相手を大事にする気持ちや、相手の先にいる相手のことま大事にする気持ちが見えて、尾有の手紙のシーンでいつも感動します。
純粋な人だからこそみんなにひどいことを言う後藤はキライなのかなとも思いました。でも冒頭のシーンのときに去っていく後藤の姿をじっと見ていて、とても泣けます。
小説になっちゃうぞ、バッタを燃やすと…、カマドウマも…、昆虫に例えると誰に似てる?など面白い台詞がいっぱいで、大平も何度も言っていたのですが目ヂカラがすごくて、間の取り方も最高でした。いらにゃいは突然嬉しいことを言われての唐突な照れ隠しなのかなとも感じました。
流山のような性格の人が部隊にいて、仲間たちが心救われていた部分もあったんだろうなと思いました。

✈︎
熊田もムードメーカーで、はちゃめちゃなトイレ事情と大平とのやりとりにただただ笑っていたのですが、ものすごく細かいところで仲間を大切にしているのがとてもよくわかって、声に出す台詞がない部分でも何度も泣きそうになりました。
合わせる顔も減ってると足立に言ったあと、足立が神妙な表情になったのを見て小さくごめんなと声を掛けているときがあったり、石田中尉に肩を貸す流山の背中をぽんとしたり、つぎはぎ爆撃機を作るときに色々気遣う動きをしていたりと、見どころがたくさんあって目が離せません。
足立が眼鏡を捨てようとしたとき、すっと止めて自分が服を脱ぐのが格好良すぎました。
そして熊田もみんなのことが大好きなんだなと思いました。トイレのこともそうなのですが、仲間を見るときのにこにこした笑顔が忘れられません。面白い言動の中の朗らかさがすてきでした。

✈︎
真面目で誠実な足立が、このメンバーと同じ部隊というのがまた面白いところだなと感じます。
眼鏡をなくして爆弾を落としてしまったというのも、実際は笑い事ではないかもしれませんが微笑ましくて、それを仲間と喋り合っているのがかわいかったです。
後藤と争いそうになったときに目つきがキッとなるのが、仲間といるときのふわっと優しい表情と違っていたり、石田中尉に戦況を報告するとき手のひらがぴしっとなったりするのも、足立の性格があらわれていました。
大平や流山の言動にたまらずずっと笑っているときがあって、それも含めてとても面白かったです。
冒頭のシーンで敷井を真剣な眼差しでじっと見ていて、一番最後に尾有と飛び降りたのかと思うと、敷井に対する足立の思いがうかがい知ることができて胸がいっぱいになります。
捨てるのを止められたあと眼鏡をまた掛け直すところの表情に色々な気持ちが含まれているように見えて、その後敷井に声を掛ける笑顔にも涙がでました。

✈︎
居眠りしているときにみなこちゃんの夢を見ているのかと思うと、尾有の居眠り癖もうるっときます。
大平の号令で集合するときに、敷井の頭が当たってわたわたしているのがかわいらしかったです。
流山に手紙のことを本気で謝っていて、この二人の友情に泣けてきます。ありがとうと言う声と、俺がお前に手紙を書くよ、という台詞に優しさとあたたかさを感じます。
魔女がいます全裸の!というおちゃめな部分もあったり、熊田に機内で投下されたあとに奥でわちゃわちゃ笑っていたり、面白かったです。
目の良さ悪さのことで足立と話しているのも、お互いのよさをにこにこ伝え合っていて、戦いの最中でも相手を思えているのがすてきでした。
敷井に掛けた最後の言葉が本当に格好良くて、その言葉の通り尾有が最後に飛び降りた(足立と)と分かって、涙が止まりませんでした。

✈︎
僻んで悪態をついていた後藤が、敷井をはじめみんなと関わっていく過程で、心情が変化していったのがとても鮮やかに見えました。
最初こそ一触即発みたいな関係でしたが、わちゃわちゃたのしくやっている部隊の面々が変わらずわちゃわちゃやり続けることで、戦闘機乗りの孤独に蝕まれていた後藤の気持ちが少し違うものになっていったのかなと感じました。
出戻中尉に叱られたとき、面白いことを言われて笑ってしまっているのがたのしいのですが、あの場面で諌められたことが重要だったのだなと思いました。
敷井にうらやましいと吐きだして、背中を押された後藤が、ちがうからな!と混乱して叫んでいるのがかわいかったです。もっと日が経って、部隊のみんながわちゃわちゃするのを見たりツッこんだりしている後藤も見てみたかったと思わずにいられません。
ああ分かっている分かっているぞ!のやりとりが面白くて、これは石田中尉のときもそうなのですが、直前まで面白い場面なのに、命を燃やして尽きるまでが一瞬で、でもその一瞬がとにかく(言い方がよくないかもしれませんが)強く輝いていて、別れを惜しむ時間も言葉も許されないというこの一瞬の出来事がとてもリアルでした。
後藤がああしてでもみんなの機体を守ろうと決めた瞬間や、ああするしかないと悟った瞬間のことを考えると、実際にこういうことが起こっていたのだと思うと言葉になりません。
冒頭で誰に何を伝えるでもなくすっと去っていく後藤に、ただただ切なくなります。

✈︎
石田中尉のふにゃっとした笑顔が癒しでした。
足の怪我はきっと挫いただけではなかったのかもしれないと思うような、良い意味でつかみどころのない姿が格好良かったです。
出戻、と掛ける声の柔らかさや出戻中尉と飲んでいるときの話し方の優しい抑揚がとても好きです。
戦闘機乗り側の思いや苦労を、石田中尉や後藤を軸としたお話を見てみたいと思いました。後藤のことを心配していて、部下たちのことをひとりひとり気に掛けている優しさが見えてすてきでした。
最期の言葉が「気にするな」というのが、思い出すだけで叫びそうになります。昨日まで、さっきまでそこにいた人が、もう今の瞬間はいなくなってしまっているというのが、底なしの穴に落ちたような気持ちになって、涙が出る前に「嫌だ!」という思いになります。亡くなった現実を理解したくない認めたくないとすら思う間もなく、石田中尉の最期のシーンはとにかくつらかったです。

✈︎
この夏、御笠ノさん脚本演出の『スタンレーの魔女』を観ることができて、本当によかったです。
役者さん方のお芝居というのを忘れて、そこに生きている隊員たちの生活とロマンと戦いを夢中で観ました。
公演が終わってみんなの姿を見られなくなっても、みんなの笑顔をずっと覚えています。

あやめ十八番 しだれ咲きサマーストーム 感想

 

あやめ十八番さん『しだれ咲き サマーストーム』の感想のメモです。

 すてきで粋な舞台をありがとうございます!

 ほんとに箇条書きの覚え書きです、あとできちんと書きます。

 お話の筋にはあまり触れていません。台本をまだ読んでいないので、間違い等多々あると思います。順番もはちゃめちゃです。かわいいかっこいい好き しか言えていなくて申し訳ございません。好きな部分がありすぎて全く書ききれていません。



メモ

・『大酩亭』粋だなぁ

・お酒の名前たち

・猿若!中村屋!(ちがう)

・あばたで籠釣瓶花街酔醒思い出した

・出囃子がおしゃれでかわいい

・スプレー撒き合いながら戦ってるのたのしい

・お茶とマフィンで仲良さげな二チーム

・突然ふっとんでくる東薫とアキさんに心臓飛び出るかと思いました

・『番匠アキ』のメクリのとき「危ねぇよ」な感じに気遣うアキさんがかわいい

・三両が百両になって無くなっておわる

・仲良く酒を飲み交わしてる(のにアキを利用するし斬るのか東薫……悪人だ。)何を肴にしてるんだろう

・「……やべ。」

・なおはちどのー!はちごろううじー!F外失!のよちゃんbot

・「大丈夫だ今俺が」表情の移り変わりがとても「……助け出してやるからな」すごい

鬼瀬川が牡蠣右衛門の見張りを買って出てたのか……

・幽霧ちゃんのばきゅんがしぬほどかわいい

・薄蜘蛛姐さんの嫌そうな顔が好き

・夜中すっと目を開ける東薫が怖い

・「この心だけは真実です」「必ず幸せにします」……。

・扇風機の、あ〜〜

・藤七郎ひどすぎる自分で働いてほしい

・「なんか。なりたくないって言ってるけど。。大丈夫。。。」

・清平さんの足の動きがめちゃくちゃたのしい

・のよちゃんがロボっぽい動きしたり音楽に合わせて動いてるのかわいいし声のメリハリすてきすぎる……髪の飾りをびよびよひっぱるのが好き

・揚巻ーーーーっっ!(?)

・お凛ちゃんはいままで何回権太の夢を見てうなされてきたんだろう

・みんながくるう鬼瀬川、どんな風なんだろうと思ったら、扇子をゆっくり扇ぐ姿を見て岡惚れしました。うつくしい……心奪われる……たおやかに手を振ってるの大好き……ある程度概念化されてる姿なのかなとも思いつつ、東薫の気持ちがちょっと分かる

・頭の中で算段して周囲をいいようにコントロールしてく東薫が鬼瀬川にだけ頭がおかしくなってるのがめちゃくちゃ人間らしくて最高に気持ち悪くてたまりません

・仲入りのメクリのときの指先まで丁寧な感じに見入ります

・会わない方が続くっていうの、よくわかる

・耳と思考にまっつぐ入る東薫の噺家としての声

・お琴さんの声と抑揚とテンションと動きが最高に好きでずっと見ちゃいます。大好きです

・牡蠣右衛門も同時期に鬼瀬川と懇意になったのか

・お袖さんに向かって笑顔で良い声で話す東薫に腹がたつ

・今でいうメンヘラストーカーなんでしょうか(友人談)

・白菊の襲名口上がかっこよい!

・おあにいさん大変です‼︎大変なのはこっちのほうだよ‼︎‼︎(かわいい)

・お力さんも好きすぎます。甘い声と話し方とウインクに撃ち抜かれます。「あら♡」が好き

・猿若兄弟の言い合いかわいくて大好き「多分、あっちの方角です。」

・トンカチのヴィブラスラップにしぬほど笑いました

・黄桜さんの口笛がすごいです

ハピドラムが始終いい音!

・いろんな楽器があって見てるだけで面白いし聴くとものすごくたのしいです

ハケるときに頭を横斜めにする東薫がとてもかっこいい

・薄蜘蛛と幽霧の息ぴったりなところ好き「手練手管を見せてやろう!」の見得かっこいい!二人がふつうに知り合ったら気が合って仲良くなりそうだなぁ

・寄席のときや見得のときについ拍手しそうになるし大向こうから掛け声かけてほしくなります

クラウドファンディングのお願い(爆笑)すごく炎上しています。

・「んもう!鈍だね!」かわいい!

・東薫の独演会、まことにありがとう存じます。

・お袖さんがとてもかっこいい!菊子ちゃんを助けようとしてるところが好き

・牡蠣右衛門ひたすらにかっこいいけど曲者だし落語を生かそうとしてるけどやってることえげつない、しかしやっぱりかっこいい

・白菊も飄々としててかわいいけどやってることどろどろしてるし笑顔で怖いけどかっこいい、東薫がピンチのときにめちゃくちゃ良い顔で笑ってるのが最高に好きです

・はいはいはーーい!はぁいッ!(好き)

・お袖さんが襲撃に来て踵を返すときの東薫の表情がやばすぎる

・そして菊子ちゃんを速攻で盾にする

・アキさんがほんとに良い人でかわいいし心癒されます。大乱闘の中お文さんを心配しててほんとに和む……お文さんは良い旦那さんをおもちだなぁ

・お万喜さんと徳兵衛さんのバトル最高

・ぺちゃぱい!厚化粧!(かわいい)

・朝蛾於の台詞に何回見ても泣くし、牡蠣右衛門の「逃げっちめぇ!」にも毎回泣きます。この二人の関係が大好き

・忍者屋敷にしちゃったことに頭抱えてるアキさんがかわいすぎる

・「大詰めだ」心底かっっっこいい

・藤七郎を殴るお凛ちゃんの頬に涙が伝っててもらい泣きします

・好いた男を吹っ切る女の図がかっこいいし、菊子ちゃんとお袖さんが取り押さえられてる東薫を見て泣き崩れてたり辛そうにしてるのがまた良い

・即座に「騙しやがったな……‼︎」ってなる東薫……なんてやつだ

・仏罰なんて言ってるのがなんかもうほんとにひどいな

鬼瀬川の手の鳴る方へ生きてきたけどこの場で捕まえられるほうは東薫

・とっくに恋はどこかへ逃げていってしまってたのかもしれない

・見得を切る藤原さんを生で観るのがひとつの夢でした。まことにありがとうございました

・本当に感情で始まりお勘定で終わるしだれ咲きサマーストームでございました(とってもすてきでした)

・そこからの流れで、カーテンコールで一番上にいる白菊、中段の牡蠣右衛門、一番下の東薫の図が最高以外の何物でもありません。良い意味で鳥肌が立ちました

・面白くて面白くて、本当に酩酊した気分で観ております

・サントラが出ることがうれしすぎます!


᯽ ᯽ ᯽


【第一幕】

一場

・チューニングでテンションが上がります。

・久保田さんの声の響き方が舞台上の空間に溶けるような感じで心地いいです。

・柳の向こうから歩いてくる人の図を色々な場面で見られるのですが、風情があるのはもちろん、美しくもあり怖くもあり、雰囲気がひやっと引きしまるような気がします。

・サックス二本吹き本当にすごい……リードどうなってるんだろう……

・後妻打ちがあると聞いて見たい牡蠣右衛門と見たくない東薫の対比から、話中この二人を比較して観るととても面白いです。似ているところもあり、全くちがうようでもあり

・旦那さん「ハイッ。」「やめてー!俺のために争わないでー!」

・お鶴さんのすとんと通る声がかっこよかったです。抑揚が歌舞伎に近い気がして好きです。

・女の人たちのそれぞれ持ってる武器が面白くて、特にスプレー撒き合ってるのが好きです。

・アキさんと東薫の仲のいいところを見ていると、全部観終わったあとだとなんとも遣る瀬ない気持ちになります。

・黄桜さんが高いところで演奏してるのがなんだかかわいらしいです。

・「……飲み込んだぞ。」何を、が後半分かってぞわっとします。これを笑顔で言うのがまた……

・牡蠣右衛門がとても魅力的で、お袖さん、お万喜さん、白菊、東薫、朝蛾於との関係をそれぞれ追うのが面白いです。


二場

・白菊の出囃子『あやめ浴衣』最高です。

・にこにことしつつ観客を引きつける力がすごい

・飄々とした白菊の本心というか本質というか、それがだんだん分かってくるところも本当に面白いです。東薫、白菊、牡蠣右衛門のことを見ていると、なんなら男もえげつないなと思います。

・黄桜さんたちが白菊を慕ってるのがかわいいです。

・「久保田、塩まいてやれ、塩。」

・白菊の中で東薫の存在がどういうものなのか、じっくり考えると頭を抱えたくなります。


三場

・「このすりこぎ野郎ーー!!!」

・音楽がぽこぽこかわいくて好きです。木材を直接叩いているとのことで、ピッチを合わせながら切るの大変だろうなぁと思いました。

・初回観たとき突然二人がすごい勢いで吹っ飛んできたのでびっくりしすぎてとび上がりそうになりました。コミカルな動きもたのしいし、音楽に合わせてばたばたしてるのが面白いです。

・『名作の去り状』という概念が謎で(出来のいい離婚届とは?という意味で)、台本の注釈を読んだらなるほどと思いつつ、なんてこったとも思いました。お袖さんがあんまり可哀想です

・アキさんがメクリのときに危ねぇよ避けな、みたいなことを言ってるのが大好きです。清涼剤……

・お袖さんのシャンとしたところも大好きです。一言ひとことが決め台詞のようで気持ちがすっとします。

・お万喜さんのカラッと明るいところと笑顔がすてきです。

・お文さんもとっても優しくてかわいくて、お声が可憐だなぁと思います。

・この優しくて明るい人たちに囲まれながらも、東薫の欲しいものは全く別の次元にあることに始終ぞわぞわします。意気地とかそういう問題じゃなかった……


四場

・徳兵衛さん、お人柄が愛嬌たっぷりで、でもちょっとワルいところが垣間見えてかっこいいです。

・清平さんも強面なのに動きがコミカルでかわいくて、でも真面目なシーンではかっこよくて、なんともずるいお二方です。

・黄桜さんが爪弾いている楽器の音がきれいです。

・にわかと新作落語を同じシナリオでいっぺんにやろうと考えた牡蠣右衛門の思考に唸ります。

・この三両が元になって次々とお金が行き来することになっていて、お金の動きだけを追ってみても面白いのがまたすごいです。


※また追記します

Zu々プロデュース 怜々蒐集譚 感想

♦︎ 2019年2月公演の『怜々蒐集譚』キネマ・キノドラマの備忘録メモです。感想と、DVDの感想がまざっています。自分の呟きのまとめ+αです。

 諸々のまちがい等ご容赦ください。適宜加除訂正します。

(語彙力ゼロですみません)

♦︎ キノドラマの終わりからキネマの冒頭につながっていて、キネマの中の部分はキノドラマの過去で……というつくりになっていて、両方観ると分かってくることもたくさんあり、何度観ても本当におもしろかったです。

♦︎ キネマはとにかく音と色彩がうつくしくて、ずっと見聞きしていたくなります。自然の音が細かいところまで入っていて、耳に心地よかったです。光の加減が本当にきれいでした。

 風の音、床のきしむ音、空気の音、原稿用紙の音や紙の上をペン先がすべる音、呼吸の音や声を、劇場の音響で聴くことができてよかったです。(上映会で映画館で観られることもとても貴重な機会だなと思います。たのしみです。)

 烏鷺が原稿を書くときの万年筆の音や、乙貝が右手で書くことになるときの音もとても心地いいです。

 相葉さんと相馬さんのお芝居が最高でした……! 役が溶けているといいますか、役に溶けているように感じました。感情がにじんでいたりあふれていたりの繊細なお芝居がとてもとてもすてきでした。

 叫んだあとに静かに訊ねる乙貝の声と、ためらいながら頷く烏鷺の表情に言葉が出なくて、胸をかきむしりたくなります。

 乙貝が電報を受け取って読んで外に出て寒椿を埋めて、のところのカメラワークと音楽と音と相馬さんの演技がすさまじく好きです。床の軋む音とか音楽がわざとゆがめてあるところとか、乙貝の動きのゆるやかなたわみと声の苦しそうな感じとか、そのあとの夢とうつつがまじったような静かな場面も好きです。

 冒頭の『才をこう』(違っていたらすみません)は、「乞う」「請う」かとも思いつつ、「恋う」の文字が思い浮かびました。

 手をのばしてふれようとしたあと、烏鷺が顔をきょろきょろさせているのがかわいかったです。

 烏鷺は乙貝の才能も乙貝自身のことも大切にしたかったんだろうと思います。まぼろしの中で乙貝に『約束をおぼえているか』と繰り返し問う烏鷺の気持ちが、一連の出来事の根幹になっていることが、キノドラマにもつながっていてたまりませんでした。それをふまえてのキノドラマでの出泉先生の台詞で泣きました。

 烏鷺公外と乙貝紅葉の書いた本が読んでみたくなりました。本の題名もとてもきれいでした。そしてあの原稿にはどんな文章が綴られているのかなと気になります。

♦︎ Hamlet Machineさんの『幻灯の永遠』も頭から離れません。穏やかだけど仄暗いようなタンゴが怜々の雰囲気そのものという感じがします。キネマで流れると歌詞と旋律が心にぐっさりというかずっしりというか、感情がぐしゃっとなるような、でも軽やかなようなふしぎな気持ちになります。DVDをヘッドホンで聴くと、曲が流れ始める前の空気の音まで聞こえて最高でした。

 怜々蒐集譚の音楽が大好きでなりません。
 全体的に流れるピアノの音がまるくてうつくしいです。どの楽器の音もずっと聴いていたいです。場面や雰囲気に合わせた曲が、じわりと物語の色を深めている気がします。

 それぞれの楽曲が、烏鷺と乙貝の声と空気の音にまざって溶けていっているのが本当にきれいです。サントラが出たらいいなあと心から思います。

♦︎ キノドラマは台詞の音の面白みや無言の一瞬、音のない瞬間の感情の動きを感じることができるのがとても味わい深いと思いました。ことばの流れがよどみなくて聞き心地がいいです。ところどころ原作と読み方を変えているのは、文字が見えない舞台で言葉をわかりやすくするためかなと思いました。

 思考のスピードと舞台上の時間経過がちょうどよくて、謎解きのような、これがああなってこことつながる、みたいなお話の流れにのれたのがとてもたのしかったです。

 溝口さんの南君はとてもかわいいのに芯がしっかりしていて清廉で、佇まいが凛としている印象を受けました。溝口さんの純朴なお人柄がお芝居からじんわり伝わってきて、いろんな人に振り回されつつも聡明で、皆に愛されるキャラクターでぴったりだと思いました。誰を見るときもまっすぐで、しっかり相手をとらえている感じがします。

 藤原さんの出泉先生は、好奇心に駆られつつも懐が深くて優しい感じを受けます。

 出泉先生が相手のことを、探究心にひかれるように丁寧に探っているときの、いろいろな表情を観るのが面白いです。南君を見るときと、乙貝を見るときと、葛葉さんを見るときと、公美子さんを見るときと、芯は同じでも表情やまなざしのやわらかさや優しさのちがいがとても好きです。

 出泉先生と会話することによって変化する相手の様子にも見入ってしまいます。

 この出泉先生と南君の対比とバランスがたまりませんでした。

 この二人がさまざまな登場人物にかかわっていくとき、繊細なものがこわれてしまわないように大事に見守りつつ後押ししているようにも見えて、おだやかで切ない気持ちになります。

 キノドラマはこの二人と葛葉さんが話の軸になっていました。

 味方さんの江戸弁が耳に心地よかったです。大向こうから掛け声が聞こえてきそうな瞬間があって、立ち振る舞いもとても爽快でした。朗々としたお声や表情がすてきでした。葛葉さんもまた相手に対してあたたかな優しさをもっている人でした。

 原作でも思ったのですが、南君と出泉先生のコンビも面白いですし、南君と葛葉さんコンビのかわいらしさ、葛葉さんと出泉先生の関係性もまたちがって面白かったです。

 原作の登場人物がそれぞれ掘り下げられていて、見どころばかりでした。

 岸さん演じるお医者さんのかなしさが、遺品の整理をしているときの表情やため息に表れていて切なかったです。大きな病院なら、と思いながらも助けてあげられないことに色々な感情になっているのだろうなと思いました。出泉先生のやりとりで救われた部分もあったのだろうなと思ったり、来島さんとの会話で感情が動いたのだなとわかる雰囲気がとても好きです。

 瀬戸さんの公美子夫人のうつくしく凛としたお姿に見とれつつ、時折小刻みに震えている肩や口元に心臓がぎゅっとなりました。烏鷺のことばが自分へ宛てたものではないことを悟っていて、微笑んでいるように見えても目には涙がいっぱいで、乙貝と出泉のいる所から去るときにひとつ呼吸をして背筋を伸ばして歩を進める姿に涙腺がゆるみます。

 舞花さんのかわいい笑顔にひたすら癒されました。ほわっとしたお声が物語の清涼剤でした。野尻さんのボーイさんも深みのある格好いいお声で、冒頭の語りがテンポよく軽快で、一度三人の方を見て止まる瞬間が面白かったです。この二人の会話がかわいらしくてほっとなごみました。

 宮地さんのお芝居で涙がぶわっと……。南君との場面ではやわらかな声と所作に心奪われました。そして舞台で掘り下げられた部分に感情を揺さぶられました。優しく笑顔で語りかけているのが、ゆるやかに嗚咽に変わっていくところが大好きです。

 鯨井さんの演じる来島さんもあのように掘り下げられていて、南君の素直さを評価しているところなどコミカルなところもかわいくて、そしてお医者さんとの場面でじんわりとした気持ちになりました。いろいろな人があの出来事の結末で救われたのだなと思いました。

 出泉とのおもしろ勝負みたいなシーンもとても好きです。滔々とした話し方やすらりとした佇まいから目が離せませんでした。

 相馬さんの乙貝先生の気怠げな雰囲気と抱えているものが綯い交ぜになっている様子が苦しそうで、観ているのがつらくなるほどでした。

 このまま本当に倒れてしまうのではないかと思うくらいに足元が覚束ない感じで、食事を召し上がらず演じられていたとのことで大変びっくりしました。目がうつろになって南君の首を絞めるシーンでは、動きが別人そのもので、乗り移られている様子に鳥肌が立ちました。

 キノドラマの乙貝を観ると、キネマでの出来事が思い出されて泣きそうになります。

 ぼろぼろに傷ついた(自分から傷つきにいったような)乙貝の二年間を、南君のまっすぐさがとらえて出泉先生の優しさが包んだように見えて、また泣けてきます。

♦︎ DVDのリーフレットの写真、物語の今後が見えてくる場面のような気がしました。あのシーンが選ばれたのかとそわそわしました。

 原作の『隠され郷』、オカルト物の怪アヤカシ好きにもたまらないし、出泉先生と南君の関係性や、南君の心情の変化と気づき、それから味方さんの演技でぜひ拝見してみたい場面があったりと、読んでいてたまりません。

 キノドラマとキネマを観てから隠され郷を拝読したのですが、読んだ後に観劇して、この関係がこう変わっていくのか……など色々考えて、またちがった楽しみ方ができて新鮮でした。

メモ

・南君の懐中時計

・烏鷺の遺品の万年筆(モンブラン……?)

・「約束をおぼえているか」

・未練はあるか、うん少し、いやない

・ニブの詰まり 丸善 ウォーターマン

・忠信

(のちほど追加)

 DVDの特典映像も見応えがあって、どのような思いをもって演じてらっしゃったのか、人物についてどのようなお考えを抱いているのかなどが分かって、さらに楽しむことができました。

 7月に映画館での上映会があるなんて、とても贅沢で本当に嬉しいです。

制作者さん側のいろいろなお話を伺えるのもたのしみです。

 そして、このスタッフさんやキャストさんでまた続編が観たいなと強く思います。それまでしばらくこのうつくしくてやさしい物語と音にじっくり浸っていたいと思います。

キ上の空論#10 ひびのばら 感想②

キ上の空論#10 ひびのばら

輝男サイドの個人的な感想メモです

いろんなまちがい等ご容赦ください

 ことちゃんと輝男の関係を知ってからのカーテンコールで、梨里杏さんと藤原さんがふたりで並んでお辞儀をされるのを見ると、感情がいっぱいいっぱいになります。

 人の言動にはかならず理由があるから、なんでそんなこと言うんだ…とかどうしてそうしたのか!?とか思うときに、その理由をじっくり考えるのがおもしろいなと、輝男だけでなく全編全登場人物通して思う作品です。

 梶原さんが立ち去ってから、泣きながら手を伸ばすことちゃんには戻ってきてくれる人はいないんだなと思ってかなしくなりました(そしてのちの谷口さん)

 輝男はどんな思いで取り壊しを見てたんだろうとか、日向子さんやことちゃんに会ったりしたらどうなるのかとか(見たいけど物語的に会わないのがすてきな気もします)

𖦞 あのうつくしい演出の起床で、どんなに言動がひどくても人物像としては純粋なものに属するように見えるのがすごいです。

ドンドンドンっつって、のナチュラルな怠惰加減がおもしろいし、小久保君とのやりとりがもう支離滅裂すぎて(ダメ人間的な意味で)いっそたのしく見てました。

ある程度ダメさがすさまじいと、逆に清々しさを感じるというか、マミさんも美波ちゃんに言われてましたがものすごくよくわかりました。

𖦞 輝男サイドの時間軸だと瞳ちゃんがとても好きです。たぶん親のことで苦しんできたのかなと思いますし、「深いよ!傷!!」で泣きそうになります。生まれてくる子どもの立場を考えて、そして20年は親やるんだよということをしっかりわかっているところが好きです。

もし瞳ちゃんに輝男との子どもができたとしたら、瞳ちゃんはどういう行動を取ったのかなと考えてまた泣きそうになります。

反面、美波ちゃんの言う、最初から親らしい親はいないしどうなるかなんてわからない、というのもよくわかります。実際に赤ちゃんが産まれたら変わるかもしれないよな、とも思います。

だけどなんだかこのお話を見てると、人はそう簡単には変わらないし変われないんだということがひしひし伝わってきて、瞳ちゃんの抱えてるかもしれない過去を考えても、やっぱりむずかしいんじゃないかなと思いました。

輝男がシャワーでいいかなというシーン、とってもうれしそうなのがめちゃくちゃかわいいです。山内芹那さんの声が凛としていて、本当にうつくしくて涼やかなお顔や立ち振る舞いだなぁと思いました。

𖦞 小久保君と輝男は一体どういう間柄なのか、謎が多いです。

後始末を代わりにやってあげたり、寝床で吐かれても突き放さなかったり、金の無心をされても何だかんだと貸してあげたり……

お金持ちで面倒見がよくて、輝男をさん付けで呼ぶし、どういういきさつでの関わりなのか知りたいです。

あんなに言動がダメでも輝男の周りにはいつも誰かしらいるのが、なにか惹きつけるところがあるんだろうなと思います。(あとちょっとラストの曲も思い出します)

おじいさんの形見のお酒の話、輝男本人への罵倒よりも、小久保君が家族を大切にする気持ちが輝男をがんがん殴りつけているような気がして胃がえぐられました。

𖦞 輝男がお風呂嫌いな理由とか寝てるときにみる夢とか、ぜんぶ分かったときがしんどすぎました 。

今までの苦労や傷があった結果のああいう人物なんだと思うと、どうにも惻々とした気持ちになります。

お風呂嫌いで清潔にできないから仕事も難しいのかもしれない、そうするとだんだんああいうくらしに行き着くのかもしれない、とも思いました。

小さい頃と、それ以降のくらしなんかも想像するとつらくてだめです 。

だからといってもちろん、つらい思いをしてきたからひどいことをしていいということにはならないので、本当に『どうしようもない』人なんだなと感じました。

ダメ人間という意味の『どうしようもない』と、そうすることでしか生きられないという意味の『どうしようもない』のどちらも含まれているように感じました。

純粋に本能で生きてるけども、マミさんの嘘を見抜く力や働かなくても渡り歩いていけるくらいの生きる力はあって、それが逆にくるしいだろうなと思います。

𖦞 『そうしようと思えば能力的に可能なのにそうしない人』はクズという部類だろうかなと思うんですけども、『そうしようと思ってるけどどうしてもできなくて、諦めて生きてる結果とんでもないことになってる人』はどうなのかなと思うんですけども、輝男は前者の『クズ』なんでしょうか、なんとなく後者のようにも感じます(言動だけみたらクズかもしれない)

もちろん生まれ持った性質が大きいとは思うのと、両親と弟とのくらしや、両親の性質などなどがものすごく大きく影響すると思うので、かなり気になります 。

家族関連のことを多少なりとも克服することはもう諦めてしまってるのかもしれないというか、そもそも克服ということを考えていない可能性が高いけども(無意識に努力したことはあるかもしれないけど)、トラウマが根深いことによって血縁をつくることや水や狭い場所が生理的精神的に無理で、その『無理』が輝男の第一の優先順位にきているのでほんとうに文字通り『どうしようもない』ように感じました。

言動がすさまじいけど、マミさんを叩きはすれど殴る蹴るはためらってたのが、そのへんはまだ踏みとどまってる感じがします。心からのクズだったら殴る蹴るをしてる気がします。

日向子ちゃんのことも好きにちがいないのに、『第一の無理』が発生してしまったことによる悲劇、のような様子に思えました。

𖦞 個人的に、この物語の中で一番うわああと思ったのはマミさんです。

そして個人的にみどり色で一番好きだったのがユミさんなので、若干余計うわああとなりました。

子どもをいのちをなんだと思っているのか(実際はおなかにいなかったのですが)、とぐつぐつした気持ちになりましたが、でもこういう人っているよなぁと、ある意味本能で行動してるんだろうなと、またそのリアルさに感動してしまいました。

𖦞 そしてそのひどい嘘に振り回されたリョウジさんの、美波ちゃんとベンチで話しているときの台詞が、物語の根幹であるように思えました。

愛し合ってなくても子どもは生まれる、わかってなかった、と穏やかに呟くリョウジさんがぽろっと涙をこぼしていて、本当に好きなシーンです。

リョウジさんは口下手っぽさはあれど、とても優しくて常識を知っている人だと思います。コミカルな面もかわいくて、あの殴るオノマトペがめちゃくちゃ好きです。腹立たしいことがあったらあれを頭の中で唱えれば気持ちがたのしくなりそうです。

美波ちゃんはとっても声がきれいで、まっすぐな演技がすてきでした。

マミさんの手助けをする形でしたが、吐きそうになったと言っていたので、良心や常識をもっている女の子なんだと思いました。

リョウジさんと話しているときの美波ちゃんが、優しさも感じられてかわいくて好きです。

𖦞 ことちゃんが「子どもを理由にしないでくださいよ」と言っていましたが、子どもを理由に大切な人と離れることになったのは輝男も同じで、そこにいのちがうまれてしまえばいろんな物事の優先順位が変わるということを、ふたりは突きつけられたんだなと思いました。

優先順位を変えられない輝男は、日向子ちゃんと別れることになってしまいましたが、自分の血縁が存在することを知っているんでしょうか。

𖦞 2回目以降は日向子ちゃんが登場するだけで涙腺がゆるゆるになりました。

マミさんと瞳ちゃんの言い争いを黙って聞いているときの表情がほんとにつらいです。

マミさんとリョウジさんと美波ちゃんと、そして日向子ちゃんが部屋に入ってきたときに日向子ちゃんを見る輝男の表情もほんとに心が折れます。

しばらく日向子ちゃんを見て俯く輝男と、心の中で泣き叫んでいる日向子ちゃんを、つらくてもずっと見てしまいました。

日向子ちゃんはなんとなく、輝男みたいな人とは普段あまり関わりがないような感じに見えるのですが、それが余計に引き合わせたのかなとも思いました。

ケンカして出て行く前に伸ばされた日向子ちゃんの手を、面倒くさそうに取りにいく輝男の声色が回によってちがっていて、面白かったです。

日向子ちゃんがことちゃんを優しいまなざしで見るとき、輝男のことも思い出してるのかなと思うと、さびしくてあたたかい気持ちになります。

アユちゃんのお父さんはどんな人だったのかとか、そのお父さんとも別れることになってしまっているので、日向子ちゃんはあんまりそういう運がないのかもしれないというか、でもことあゆちゃんを大切に育てたんだなぁと思って、この三人家族が愛おしくなります。

𖦞 最後にみんなで、大きいおなかをわいわいよろこび合ってるのがなぜだかなんだかもうほんとに最高に気持ちが悪いなと思ってしまいまして(とてもとても褒め言葉ですこの場面とても好きです)(そして個人の感想です)

あのすがすがしいまでの気持ち悪さをClose To Youがもうぜんぶひっくるめて包んでるような、最上級の皮肉のような(生まれてくる子にはゆりかごや子守歌のようなものであってほしいと思ってしまいます)

人間てそこはかとなく気持ち悪いものなんだなぁ、気持ち悪さも含めて人間だし生きてるってことなんだろうなぁと思いました 。

𖦞 小さい頃の輝男はトラウマを抱えることになってしまって本当にかわいそうですが、今の輝男にかわいそうということばをあてがうのはなかなかむずかしいなと思いました。

子どもが子どもを育てるなんて、みたいなことばをあびるような歳には見えないから、ということは大人として生きていくしかないからです(語弊があるかもですが)

だけど輝男にはどうしてもやっぱり絶対に無理なものがあって、そのことによってたくさんのものを失うのはたしかにかわいそうだけど、じゃあどうすればいいのかということを輝男は考えなきゃならないのかもしれないなとも思いました。

周りにはそれを手伝ったり助言したりできる人がいなかったのかもしれないし、類は友を呼ぶといいますからしかたないのかなとも思いました。

瞳ちゃんはよく理解しているように見えましたが、瞳ちゃん自身も過去を抱えて生きているようだったので、どうすればいいかでなくこのまま抱えて生きるしかないという考えだったのかもしれません。

日向子ちゃんとわかれた後24年間、どうやって生きてきたんでしょうか。

よろこぶ夫婦たちを見る輝男の表情が忘れられません。『絶対に無理』は変わってないようにも思えました。

𖦞 花言葉を検索しましたら、

5本の薔薇は『あなたに出会えて本当に良かった』

野薔薇は『純朴、素朴なかわいらしさ、孤独、痛みから立ち上がる』など

とありました。

日向子ちゃんに5本の薔薇をお願いされたとき、重いやんなんか意味もたせとるやろ、と言っていたので、輝男がそういうのをちょっと知ってると考えると、どうして野薔薇の文字をいれたのか、『日々孤独』かつ『日々痛みから立ち上がる』のかと思うとそれを自分で入れたというのがすごく…

ある意味ものすごく純粋に生きている人が、自分に言い聞かせてるようにも、ぜんぶ諦めているようにも、だけど諦めきってはいないような感じもするような、というのが本当に丁寧に作り込まれている物語や人物設計だなぁと思いました。

𖦞 ことちゃんが、自分で自分をダメだとわかってる人はダメじゃない、のような話をしていましたが、輝男のことを思い出して泣きそうになりました。

また追記します。

キ上の空論#10 ひびのばら 感想①

キ上の空論#10 ひびのばら

寿サイドの、個人の感想メモです

いろんなまちがい等ご容赦ください

ぼちぼち追記などします

 キ上さんの作品は「みどり色の水泡にキス」を拝見したことがあるのですが、生き死にや子どもにかかわるテーマを流れるように描いてらっしゃるなぁと思いました。

 そして、重たいテーマを扱っているけれども、個人的には観劇した後の気持ちがすっきりするというか、謎のさわやかな気分になります。

𖦞 寿ちゃん(ことちゃん)の素朴な雰囲気がとても癒しです。鈴を転がすような声という言葉がぴったりで、どんなセリフもきれいで可憐でした。

相手にはっきり言えないところがありつつ、梶原さんには思い切りのいいところもあってかわいかったです。

自分の父親のことが気になる一面や、男女のことが分からない!と叫び出すことちゃんなりの葛藤や苦悩のいろんな部分の、どこかしらに誰しも共感するところがありそうで、がんばれと応援したくなります。

最後に梶原さんと別れて谷口さんの家へ行きますが、それがやたらと現実的で、そんなものかもしれないな…と思ったり、ことちゃんはまためんどくさい男と付き合うことになるのか、とも思ったり、ことちゃんの結末に関しては観た方によっていろんな思いになりそうです。

𖦞 梶原さんは、あんなふうに会話した女子高生のことを全く覚えていないんだなぁと、でもそんなものかもなぁと(物語を通して「そんなもんだよな」と何回も思いました)

ことちゃんも梶原さんも、相手やそのときの環境に流されやすいんだなと思いつつ、流されるといっても自分の意志だしなぁと思いつつ

穏やかで優しい人だからこそ、最後にことちゃんに別れをつげるときの会話がぐさぐさきました。

子どもにとってはその選択が良いだろうし、ことちゃんが「子どもを理由にしないでくださいよ」と言ってて輝男と同じだと思ったり、内藤先生と梶原さんはその時は愛し合ってたかもしれないけど「愛し合ってなくても子どもは生まれる」というリョウジさんの言葉が頭にがんがん響くシーンでした。

梶原さんのカラオケがおもしろかったです。

内藤先生はまさに、薔薇と棘をあらわしたような人だなと思いました。うつくしくて優しくて、でもそれだけじゃなくちゃんと棘の部分もあって、ことちゃんとベンチで話すシーンが無性につらかったです。

あと、とってもお花のいい香りがしてほんとにすてきでした。

𖦞 加賀美さんとサヤミンさんは、あっ地元の友達にこういう人たちいたな…とものすごく懐かしくなりました。

加賀美さんの精神年齢が低すぎて面白かったです。サヤミンさんがいなかったらどうなっていたのか…。

サヤミンさんはことちゃんに優しい反面、加賀美さんがことちゃんに嫌なことを言っても照れるだけだったので、そのへんもリアルだなぁと思いました。でも友達にいたら気負わず付き合えそうだなという雰囲気がありました。

ダメダメな加賀美さんと気さくなサヤミンさんのコンビがとってもかわいかったです。もごもごいいながらキスしてるところがかわいすぎました。

𖦞 谷口さんがことちゃんを抱きしめるのを見て、リアルな気持ち悪さにぞっとしました(褒め言葉です)

谷口さんみたいな人もいるよなぁ、友達にいたなぁと再び思いました。男でも女でも、ことちゃんみたいなタイプに引き寄せられていく人っているなぁと…

いる?はい!と適当に薔薇を差し出す一瞬がとても好きです。「変態レスリング部」が通称になっちゃってて笑いました。

𖦞 主婦の畑中さん、超絶かっこいい霧島さん、ストッパーの野々村さんの3人組がこのお話の清涼剤という感じがしました。

畑中さんのおもしろさかわいさがなかったら、物語を観るのがもっとしんどかったかもしれません。旦那姑問題に悩みながらも、たのしく発散する明るさが好きです。(歯ブラシはひどいけども)カラオケもっと見たかったし津軽海峡聞きたかった。

霧島さんは一体何者なんでしょうか…ダントツでかっこいいのは霧島さんだと思います。一番ファンタジーに近い人かもしれません。一番好きです。じゃがビーの入れ物を口にくわえながらはけるのがかわいいです。

野々村さんを見るとほっとします。みんなのまとめ役で常識人というか、俯瞰で物事を見られる人なのかなと思いました。石井玲歌さんの配信で、なんと声のきれいな方なんだろうと思いまして、舞台上では役にぴったりのお声に変わっていて、ほんとにすごいと思いました。

𖦞 そしてアユちゃん。大好きです。

お父さんが違うということは、日向子ちゃんはあのあと別の人と一緒になったのかと思うと、また色々な気持ちになります。

ことちゃんが大好きなんだなぁと、この姉妹を見てると心が安らぎます。

「お花きれい!」がおもしろかわいすぎて、ほんとに大好きです。ことちゃんとアユちゃんのシーンを延々ずっとずっと見てたい…。アユちゃんがお花置いたらと提案したことがつながってるのもとっても好きです。

加賀美さんからことちゃんを守るように寄り添ってるところがたまりません。あったかい気持ちになるし、お母さんともなんだかんだとなかよくしてるのがかわいいです。コロッケもかわいい

花山荘の取り壊しのとき輝男と出会うのが、最高にしびれました。アユちゃんは輝男とは直接なんの関係もないことがぞくっとします。

輝男が消えたあと、少しさがすように見ているところがものすごく印象に残っています。

つづきは別記事に書きます。

極上文學XIII こゝろ 感想メモ


極上文學『こゝろ』の感想です。

だいぶ引きずっているため何を書いているんだか分からない部分や、個人的な感想のため意味不明な部分も多いと思いますが、諸々のまちがいや誤解釈などどうかご容赦ください。ときどき加除訂正します。




【私(わたくし)】

・内海さんの私は、まっすぐで誠実な青年という印象がありました。先生の姿を澄んだ眼で見ている様子に清廉ささを感じました。静さんや先生の言葉の意味を考えながら、相手の思いを感じて反応しているように見えました。

・櫻井さんの私は、人懐こくてかわいらしく、まだ精神的な幼さも少し残っているように感じられました。一途で健気で、小動物のように先生について行く姿とそのかわいらしさのため、後半が余計につらかったです。

・先生の遺書を読んでいるときの私が、声を震わせたり目を見開いたりしていて、私の心情を思うとほんとうに言葉になりません。

・遺書を読み終えたあとの描写が追加されていて、静さんに駆け寄っても何も言えないところや、行っちゃいけません行かないでくださいと泣き叫ぶ姿に私の思いが詰まっていました。先生が長年誰にも言わずに抱えていた罪や苦しみを自分にだけ打ち明けて、人知れず亡くなっていくことによって、私にとってどんなに重たいものが残るのかと思うと、非常に複雑な気持ちになります。

・『〜〜本名は打ち明けない。』と言って(書いて)伝えている対象は誰なのか、今思うととても気になります。このあたりの台詞を清しい声色で読まれていたので(そのすぐ前の回想のときはつらそうでしたが)、それに最後の私の表情から、私にとって先生の思い出や過去はとても大切で、あたたかいものなんだということが分かりました。




【先生】

・元々の性質が変わってしまうほど、先生のおこなってきた(おこなってしまった)ことが重大で取り返しのつかないものであることが、ただただ苦しかったです。『死んだつもりで生きて』きた先生の、周囲に対しての感情が止まっているような様子が、私と出会うことによってすこし意志が動くようになってきたように見えたのが、後々の遺言につながっていて涙が出ました。『あなたはまじめだから。あなたはまじめに人生そのものから生きた教訓を得たいと言ったから。』の声がおだやかで優しかったです。今まで誰にも言わなかったことを、まっすぐ受け止めてくれる相手ができたことが、先生にとっては最後の幸せだったのかもしれないと思いました。

・Kに対して、何も言ってくれないんだな、何か言ってくれ、お前の言葉が聞けたなら と繰り返す先生が一番、Kからもう何も聞くことはできないとわかっていて、それはすべて自分のせいだともわかっているのが見ていてつらかったです。

・Kは先生にとって、幼馴染としてかけがえのない存在であったことは間違いないと思うのですが、先生の『平生はみんな善人で、いざという間際に急に悪人に変わるから恐ろしい』という言葉のとおりに、憎んでいた叔父と同じになってしまったことがひどく見惨だった、という話の流れが、先生のどうしようもなく人間らしいところをあらわしているように思いました。

・静さんの前で天罰だからさと言うところや、私に対してたった一人になってくれますかと言うところが、先生という人柄を深めているなと思いました。Kがお嬢さんに『月が綺麗ですね』と言っている間、後ろですごい顔をしながら台本をめくっているところや、めくり方も毎回ちがっているのにもぞっとしました。最初、私の顔についた砂を払うところも、どのような心情でしたのだろうと思いました。

・親友を出し抜く形で静さんを得て、そのことによりKを喪った先生の姿は、程度や形は違えど人間なら誰もがもっているエゴの部分であり、それががわかりやすく凝縮されている気がしました。

・私と話しているときの、感情の起伏がほとんどないような、ほんとうに死んだように生きている状態と、過去のKとの回想で明るく優しい性質があらわれている様子や、それがお嬢さんとのことにより次第に視線や声色が鋭くなっていくところで、心情の移り変わりが先生自身の行動によるものだと改めて感じられて泣けました。

・Kの死因と、それを考えて涙している先生の姿が印象的でした。恋というものにとらわれすぎていて見えなくなっていたことと、溺れかけた人に熱をうつしてやるような気持ちでKを一緒に住まわせたのに、たった一人で寂しくてしかたない状況にしてしまったことに、ただただ後悔しているんだろうなと思うと、胃がしぼられるような感覚になりました。

・ひとことの台詞のうしろに何十何百もの意味があるだろうと読み取れる藤原さんのお芝居に、始終鳥肌がたちました。




【K】

・芹沢さんのKは、先生に対する気持ちがとてもきれいだなという印象を受けました。墓前で手を合わせる先生に何かを伝えようとして、それは叶わないという場面での先生のことを見る目が悲しそうで澄んでいました。先生に抜けがけされても、怒りというより悲しみが勝っている様子に見えて、余計に泣けました。

・松井さんのKは、実直誠実で純粋な感じがしました。先生のことを親友として大切にして信頼しているようにも見えました。だからこそ先生とお嬢さんが結婚すると知ったときの表情がつらそうで、自害した理由も孤独に耐えられなかったためというのが痛いほど伝わってきました。

・釣本さんのKは、先生やお嬢さんのことをじっと見る視線にたくさんの意味があるように思いました。涼やかな面立ちの中に揺るがない信念があって、それが先生とお嬢さんに関わることによって歪んでいく、折れていくのがわかりました。自分を出し抜いた先生のことをどう思っているのか、様々な感情が含まれているように見えました。

・Kの視点や性格から考えると、奥さんに話を聞くまで何も知らなかったのだとすると、また話を聞いて元々先生とお嬢さんが結婚する予定だと思ったのだとすると、信頼している親友に隠し事をされたことを知ったらほんとうに孤独だし、先生にはっきりと打ち明けてもらえなかったことが悲しいし、お嬢さんに恋をしていた自分も惨めだし、何より自分の目指す状態から大きく逸脱しているのに気づいたことによる自分への絶望に『もっと早く死ぬべきだったのに』と思うのもわかる……と思いました。Kがなぜ自殺という方法をとったのか、いろいろな捉え方ができて、それに対して考えを巡らせることができるのが、この作品の面白いところだなと思いました。




【妻】

・白石さんの静さんは、可憐で優しくて、隠れた聡明さも感じました。先生に『おれが死んだら、』と言われて、よしてと抑えた声を出して寂しそうな顔をしたところに胸が痛みました。先生のことを心から心配していて、けれども自分には何もできないという気持ちが笑顔の中に滲み出ていて、最後の場面が一層悲しく思いました。

・東さんの静さんは、明るく素直で、すこし茶目っ気の残るかわいらしさがありました。若かりし頃の先生やKに対しても、天真爛漫な雰囲気で接していて癒されました。だからこそ、先生がなぜ悩んでいるのか理解してあげられないつらさを、明るさの端に感じて、悲しい気持ちが伝わってきました。

・お嬢さんについてもさまざまな解釈があると思うのですが、この極上文學の中では、先生が妻に対して記憶をなるべく純白に保存しておいてやりたいと思ったくらいに、大切であたたかい存在であったことを願ってしまいます。

・最後に『たった一人の家族ですもの。』と微笑んだ静さんはお強いなあ……と思いました。あの笑顔で涙腺がとてもゆるみました。きっと立場的に一番つらいんじゃないかなと思ったりもしました。先生が何も伝えずに亡くなる意味をどこかで気づいていたのかもしれません。




【具現師さん】

・前回のⅫからさらに進化していてほんとうにすごかったです。効果音をすべて担当なさっていた百瀬さんや、福島さんの流れるような身のこなし、小野田さんの笑顔とかわいらしさ、毛利さんの朗々としたお声、古賀さんの表情や歩き方などなど、いろいろな役や表現を担当されていて、見どころがたくさんでした。




☽︎
・前回から加わった語り師さんが今回も登場されました。語り師さんのお声や読み方ひとつで作品の印象や雰囲気ががらりと変わるのも、極上文學の面白いところだなと思いました。凛と響く声で、物語の輪郭がはっきり映し出されるような感じがしました。

・Kが呻きながら白いボードに色をつけていく演出に胃をえぐられる思いがしました。私や静さんにも色がつけられていって、真っ白だったものが最後には様々な色がまざりあっていて衝撃でした。直接関係ないのですが、真っ白い表紙の『こゝろ』の文庫本がありまして、今までそのイメージがなんとなく強かったのですが、そこに登場人物たちのあらゆる感情によって色がまざっていったように感じて、鳥肌が立ちました。

・Kのもとに座る先生が、『鎮魂』の花言葉をもついちょうの葉に埋もれていく演出が最高でした。私と先生の思い出にもなっているであろういちょうに、ぬりつぶされるように消えていくKと先生の姿が忘れられません。

・毎回ロゴのモチーフが作品をあらわしていてとてもすてきだなと思います。今回はお月さまとお墓といちょうの葉で、お墓まいりをしていた先生の後ろ姿や、月を眺めていたKとお嬢さんを思い出します。

・今回のピアノ曲も心洗われるような、感情に沁み込むような極上の曲ばかりでした。いつかサントラが出ないかなあと思っているのですが、作品と合わさってこその劇伴なのだろうかとも思いますが、ほしいです…。塗料演出の場面で流れる曲がほんとうに好きです。カーテンコールで流れるいつもの曲も、いつ聴いてもなぜか涙腺がゆるみます。

・原作は、もっと人間のどうしようもないところや嫌なところやずるいところが生々しく描かれているように感じて、読むとぞっとしたりがっかりしたり嫌だと思ったりしょうがないと思ったりするのですが、極上文學では登場人物の感情をシンプルにして表現を鮮やかにすることで、観客が感情移入して観ることができる作品になっているのかなと思いました。

・極上文學の醍醐味として、舞台を観たあとに原作を読むとまた新たな発見ができたり、書いてある台詞が役者さんのお声でイメージできたり、原作の良さを改めて感じることができたりして、とてもたのしいです。

・ロビーに飾ってあったフライヤーといちょうの葉と原稿用紙、あの文字はどなたが書かれたんだろうとか、撮影で使われていた万年筆とインクはどこのものだろうなあとか、細かな部分もたのしませていただきました。

・アンケートで演目のリクエスト一位だったという『こゝろ』を、最高の役者さん方や演出や音楽などで観ることができて、ほんとうにうれしかったです。どの台詞、どの場面を切り取っても様々なことを考えたくなる作品で、何度見てもちがう発見がある新鮮な舞台でした。

・心に突きささる台詞、登場人物の表情を思い出しながら、また次の極上文學をたのしみにしたいと思います。

キ上の空論#9『みどり色の水泡にキス』感想メモ


 
 
オフィス上の空プロデュース
   キ上の空論#9
みどり色の水泡にキス』の感想です。


いろんな誤り等どうかご容赦ください…
自分でも何が言いたいのやらという感じで……申し訳ございません。
メモ

頻繁に加除訂正いたします。語彙ゼロ支離滅裂です

長いです。






 


 

マコトとミドリ
  • どのミドリちゃんも愛らしくて、それを見るマコトも愛すべき存在で、なのに見ていると涙がでます。
  • タイトルの言葉あそびが冒頭にでてきて、『水泡に帰す』という印象が強く残りました。
  • 妹のミドリちゃんは兄であるマコトをどう『好き』だったんでしょうか。ばらとかみなりはマコトだけじゃなかったのかもしれないと、何度か見終わったときに思いました。
  • 加えて、お母さんのミドリちゃんが言っていた『好きだった記憶』は、どのミドリちゃんからの記憶なのかなと……妹のころからだったら、とも思って頭がぐるぐるします。
  • マコトがもともともっている性質もあったのかもしれませんが、妹を人知れず殺すという行動をとるような感覚をもっている子だったんだなと思いました。
  • 血がつながってるから未来がない、だから一度肉体が死ねば輪廻によって結ばれることができるようになる と思って殺人を犯すのが(そのときは殺人という感覚じゃなかったかもしれません)人道的なものをはずして見ると思考と行動がまっすぐすぎて……もちろんたいへんな罪ですが、MinorSwingの流れる中、ミドリちゃんを抱えるマコトの目が澄んでいて鳥肌が立ちました。
  • ミドリちゃんと同じく4分20秒息を止めていたマコトも、ある意味一度一緒に死んだのかなと思いました。
  • マコトにとって『死ぬ』とか『生きている』という概念がどういう形で理解されているものなのか、考えるのがこわくておもしろいです。
  • ミドリ先生と会えたことが泣くほどうれしいマコトにも最初無意識に恐怖を覚えたのですが、輪廻で再会するために殺したんだから当然か……と思って、胃にへんなものが溜まるような感じになりました。
  • ミドリ先生と風鈴の話をしながら声を上げてたのしそうに笑うマコトがとてもかわいくて、でもここからが本当の地獄のはじまり(と言ったら変かもですが)だと思いました。
  • ミドリ先生と出会って、今度こそ『ミドリ』と結ばれることができると思っていたのにまた失ってしまったとき、妹のミドリちゃんも最初から失われる運命にあった(マコトによるのか(妹)、事故によるのか(先生)のちがい)のかもしれないと思ったりもしました。
  • アリワラや上杉君がミドリ先生にもミドリちゃん(23)にも出会っていることを考えると、名前は偶然だとしても、顔の造作が似ているというよりはやっぱりたましいが同じだからマコトからみてミドリちゃんだとわかったという感じかなと思います。
  • 同い年のミドリちゃんに異常なまでに過保護かつ性急に接しているマコトを見て、最初に命を奪ったのはマコトなのにな……と胃がまたへんになりかけましたが、『離れててもいいから生きていてほしい』という思いを経て、そして終盤の独白でマコトがぜんぶを理解し続けていたことがわかって呻きながら頭を抱えそうになりました。
  • もし妹のミドリちゃんを殺さなかったらどうなっていったんだろうとか、やっぱりそれでもミドリちゃんは別の何らかの理由で失われることになったのかなとか、胃のへんなのもそういうことを頭のはしで考えながら観ていたからだとあとで気づきました。
  • ミドリちゃんのたましいが入った体は輪廻に耐えられなくて、ほとんどがすぐに失われてしまうのがマコトの誤算というか妹を殺したときは思ってもみなかったことだろうなと思います。ミドリ先生と出会った以降、再会するごとにものすごい不安と恐怖が膨れあがっていっただろうなと、それを繰り返していく中でマコトのなにかもだんだんと耐えられなくなっていったのかなと思いました。
  • お母さんとして現れたミドリちゃんが、程度や範囲はわからないのですが過去のミドリちゃんとしての記憶をもっていたことが衝撃でした。つらすぎる……。笑顔でマコトを抱きしめているときのミドリちゃんと、ぐしゃぐしゃになって抱きつくマコトの気持ちを考えると、感情が焼ききれそうになります。またきっと失うんだろう死ぬんだろうと思いながらそうしていたのかなと思ったりもして、今置かれているふたりの状況やとりまく人たちのことが思考から抜けてとにかく今のこの一瞬が続くといいのにと思ってしまいました。
  • 最後に幼いミドリちゃんを見つけた場面で、お母さんのミドリちゃん(や、双子ちゃん)もやっぱり失われてしまったんだなと思った瞬間心が折れました。車いすのミドリちゃんはどこまで記憶をもっていたんでしょうか。
  • お兄ちゃん!と笑顔で駆け寄って抱きついて、ハッピーウェディングの写真を撮ったのは、マコトがみた夢だったんでしょうか。妹を殺した罪と、それに対する今までの罰がぜんぶ題名の水泡みたいに消えていくような感じがしました。
  • 車いすのミドリちゃんは何年もその体で生きることができていました。マコトがもう何もかもよくわからない状態になっていても、あの本のように、光だと感じたのかもしれません。
  • マコトはあのあと、ちがう体にたましいが入ることもあるのかなと、ミドリちゃんがマコトと出会っていくこともあるのかなと思いました。そしてつぎの回を観て、またふたりが輪廻していくように感じて頭がくらくらしました。終わらない輪廻はマコトにとってはしんどいものかもしれないけど、ずっと終わってほしくない、ふたりに何度でも出会ってほしいと思ってしまいます。


 

マコトと友人たち
  • 幼いころもいろんな友達や山岸ちゃんやハルちゃんがいる中で、マコトはふつうの子どもとして生活していたんだと思います。でも山岸ちゃんが「変わってる」と言っていたので、なんとなくどこかちょっと『ふつう』とはちがっていたのかもしれません。
  • 妹が好きと言ってきたマコトの話をちゃんと聞くハルちゃんが、それ故に 妹はない、不可能で、血が繋がっているから未来がない、と言ったことがマコトの行動のきっかけになったということが、のちに血の繋がりはないとわかったときのハルちゃんの感情に覆いかぶさるようにのしかかってきたのがつらすぎました。
  • じじい復活はない、死んだもんは死んだ それだけや と言った部分はマコトはそう思わず輪廻を信じていましたが、あのときああ言わなければどうなっていたんだろう、とここでも思いました。
  • 妹とはない、輪廻もないと言っていたハルちゃんのことを考えると、妹とは未来がないなら自分の手で輪廻をすすめてしまおうというマコトの行動に身震いします。
  • マコトにとってのハルちゃんは必要不可欠な存在で、はじまる理由の人だと思います。
  • 山岸ちゃんはお話を明るくしてくれて、マコトが東京に行くきっかけになっていました。
  • 子どものころの恋敵のハルちゃんがマコトと結婚して、そこに一緒に住んでいるのが、とても人の良さを感じてかわいかったです。お話の最後までハルちゃんやマー子ちゃん、お母さんと一緒にいて、心癒されました。ほっと安らぐ場所なのに、マコトはそこにはいられなかったんだなと思いました。
  • アリワラと上杉君の存在もとても大きかったです。
  • アリワラにも 先生と生徒はなしや!とミドリ先生に出会う前から言われているあたり、友人たちの価値観と自分はちがっているということも無意識にマコトの負担(?)になっているのかなとも思いました。
  • よく『意識がとぶ』マコトの親友をしているアリワラの懐の広さというか、動揺して泣いてるマコトにハンカチを渡そうと鞄を開けようとわたわたしている優しさというか、友達を応援している姿があたたかかったです。
  • 上杉君もおもしろくて、さり気ない気遣いとか優しさが垣間見える瞬間があって、のちにユミさんに3バカと言われてましたが、最高に好きです。
  • 幼馴染とはいえ、友達の友達に付き合ったり車を貸したりするユミさんが好きです。ミドリちゃんを助けにくるところがかっこよすぎて惚れます。
  • 妹が好きだったことを話していたかはわかりませんが、ミドリ先生、同い年のミドリちゃんを失ったマコトを支えている3人の心情も追いたくなります。
  • マコトをずっと見守っている存在の3人が、歳を重ねるにつれてだんだん疎遠になっていったのかなと思うと、さびしく心細くなりました。「次はいつ会えるやろなぁ」「おれら?」「そうそう」『なんで……いつでも……』のマコトで泣きそうになります。マコトを見守りつつも、家庭をもったりしていって守るものが変わっていったんだろうと、それは自然なことなんですが、だれも理解できないところにひとりでいるマコトを思うといろいろつらくなってきます。


 

マリちゃんとレイちゃん
  • マコトの話でありミドリちゃんの話であり、マリレイちゃんの話でもあり、個人的にこのふたりに心を撃ち抜かれていました。
  • このふたりの話でもあるということはハルちゃんの話でもあるよな……と思いつつ、レイちゃんが複雑に絡み合っていてだれの話でもある群像劇だというようなことを言っていたのを思い出して、たくさんの人物の絡んださきの、というか元の部分にマリレイちゃんがいるような気がしました。
  • 登場人物たちを最初からずっと見ていて、笑ったり悲しんだりしているのがよくわかって、とてもとてもかわいくて、いったいこのふたりの正体はどんな存在なんだろうと思っていたのですが、紅葉君と蒼葉ちゃんがでてきたあたりでそわっとして、ハルちゃんが一緒にどこか行こうと話したあたりで泣けてきました。
  • 恨んどるわけでも憎んどるわけでもないでね、のレイちゃんの声が優しいのが余計に涙腺にきました。ほんとうは生まれたかったんだろうなと、ハルちゃんにもマコトにも会いたかったんだろうなと思いました。ハルちゃんがマコトの子どもの母になることを拒絶してしまったというのが、ずっと真ん前に立てていないと気づいていたからだと思ったし、マコトがだんだん傍目にもおかしくなっていったのと一緒にハルちゃんの心もだんだんおかしくなっていってしまったんだなと思いました。
  • ふたりが去っていってしまってからの舞台上が、なにかだいじなものがなくなってしまった感じがして、とてもつらかったです。

 




 

マコト(町田さん)
  • ミドリちゃんの台詞にもありましたが、目がうつくしいから余計こわいというのがまさにそうでした。
  • ひとりだけまっ黒の服で、それがこの話のマコトという人をあらわしている気がしました。
  • 殺したあとも淡々とまくらをぽいと投げて平然としていたように見えたり、お葬式でも泣かずに清々しい顔をしていたというのにもなるほどと思いました。じいちゃんの死と、お母さんの輪廻の話と、血縁とは結ばれないということから妹を殺すわけですが、輪廻があるなら体だけ殺したことになるというか、今の兄妹という関係からミドリちゃんのたましいを外すための行為だったのかと思いました。
  • それが再会しても死んでしまうという状況になり、もともとおとなしい子だったとは思いますがだんだん鬱々と思い詰めていくさまが、町田さんの純粋で透明な表現でいたいほどわかって胃が絞られるような感覚になりました。泣いたり叫んだりするもの人目を憚らない状態がむしろすてきでした。
  • 自分で命を絶とうとしてできず、死ぬことすらできなくなっているのも印象深かったです。
  • 協力してくれる友人や心配してくれる同僚のことも思考から抜けていって、ミドリちゃんという一人の人にとらわれ続けているのが、なんなら本当はミドリちゃんのそばを1秒たりとも離れたくないくらいだろうなと思うほどつらい状況だと思うのですがそういうわけにもいかず、マコトのなかでいろいろ考えてどうしようもなくなっていくのが、そしてそのことでどんどんこわれていくのが、言い方が変かもしれませんが最高でした。
  • 見つけて「しまって」という台詞で、もうミドリちゃんと出会うことよりミドリちゃんに生きていてほしいというか、死んでほしくないというのがわかって、死んでしまうなら出会いたくないと思っているのかもしれないところ、どうあっても見つけてしまうのがかなしすぎました。
  • 町田さんのまっすぐなお芝居を、2時間10分じっくり味わうことができました。マコトとして存在している姿に、とにかく、とにかく圧倒されました。



 

ミドリ(新垣さん)
  • いろいろな『ミドリちゃん』を演じられていてそれぞれのちがいもすばらしく、そしてどのミドリちゃんもかわいくて、優しい笑顔に元気をもらいました。
  • 記憶がなくてもマコトの近くにあらわれて、わずかだとしても時間を共有しているので、ミドリちゃんにとってのマコトも生きているなかに組み込まれている気がしました。
  • ミドリ先生とマコトのほのぼのしたやりとりがとても好きです。本が読めないマコトがブックオフで働くようになったのもミドリ先生の本がきっかけだと思いましたし、めんどうな生徒にもおだやかにたのしく接しているので、そしてマコトもまだいろいろ知らずしあわせそうなので、癒しの時間でした。
  • 同い年のミドリちゃんは懐が広いというか、重い彼氏(1週間)のマコトにもうまく向き合っていて、ちょうどよく優しい感じがしました。指輪をほしいと言った次の日にああなってしまうのがかなしすぎて、マコトはあの電話のあととってもうれしかっただろうし、翌日の事故が観ていてもトラウマレベルでした。
  • お母さんのミドリちゃんの記憶が何度も書いてしまいますが衝撃で、「残念ですね、タイミングが……」と笑いかける姿に涙がでました。よしよしとマコトの頭をなでる仕草や声があたたかくて、マコトはたぶん言い尽くせないくらいのしあわせと絶望を味わっていたと思います。
  • 妹のミドリちゃんが大きくなっていたらこんな人になっていたのかなと、最後のミドリちゃんを見て思いました。さいぐーじゃんぽい、のミドリちゃんの姿を思い出していたマコトは、妹のミドリちゃんに会いたいのかもしれないと思ったとき、最後のミドリちゃんとは意識をもって会うことができないのがなんとも言えなかったです。「すこしだけ、泣いた」のときの表情が忘れられません。


 

ハルちゃん(片山さん)
  • ちょっと男勝りなところもあるような女の子で、でもものすごく繊細な子なんだろうと思いました。
  • 『ふつう』に考えたらマコトの言っていることは『ふつう』ではない部分が多いのに、幼くてもそれをしっかりと聞いて受け止めて、自分の考えを伝えているのが印象的でした。だからこそそのことばがいろんなきっかけになっていて、年月を経てからの場面でそれを思い返すと本当にしんどかったです。
  • マリレイちゃんを身ごもっても産み育てることができなかったのが一瞬意外で、ハルちゃんならもしかしたら自分一人で(もしくはマリアさんたちの協力もあるかもしれませんが)育てていくのかなと思ったのですが、体が拒絶してしまったというのを知って、マコトの影響がかなり大きかったことと、ハルちゃんの繊細さがまたそこでも感じられて泣いてしまいました。
  • ハルちゃんがいなければこの物語はこういうふうにならなかったろうなと思います。反面、マリレイちゃんのお母さんになったハルちゃんも見てみたかったと思わずにいられませんでした。そうならないからこそ、この『みどり色』というお話なんだと思いました。
  • 片山さんの深みのあるお声がとても耳に心地よかったです。自転車のシーンと、終盤のマコトへのことばの場面が心に残っています。マリレイちゃんが流れてしまったのをマー子ちゃんたちに伝えるときと、血の繋がりはないと知ったときの笑い方がたまりませんでした。


 

アリワラ(藤原さん)
  • アリワラのように明るいタイプがマコトのような子と仲が良いのが最初はちょっと意外でした。どういう経緯で親友になったのかはわかりませんが、自分と反対のタイプだからこそなのかなとも思いました。加えてマコトがどこかやっぱり人をひきつける部分があるからなのかもしれません。その後上杉君とも親友になっていってるのをみて、タイプ云々でなく、友達っていいもんだなとしみじみしました。
  • 台詞をぱぱぱっとおもしろいリズムで次々と声にしていくのが聴いていてたのしかったです。にぎやかなんですが、ただにぎやかなだけでない理由がたまらない人物でした。
  • マコトを『よく意識がトぶ子』というのをしっかり把握しているので、マコトの性格について理解があるのだなと思いました。泣いているマコトにハンカチを渡そうとしていたり、上杉君を巻き込んでミドリ先生とマコトのことを見守っているのがほほえましかったです。面倒見の良さがあるというか、根が優しい子なんだと思います。
  • ミドリ先生が亡くなったことを知らせるときの声色にもアリワラの性格が出ていてしんどかったです。目の前で親友が大事な人を失うのを見たから、同い年のミドリちゃんを見張ったりのいろいろも力になりたいと思ったのかもしれません。
  • マコトを合コン的なものに連れ出して、たのしめやて!とおしりをぽんとたたいて、マー子ちゃんをお持ち帰りしたのに解散して、この場面にアリワラのいろんな気持ちがみえてとても好きです。
  • ずっと見守ってきたマコトが東京に住むと言ったときのアリワラの、驚きとさびしそうなのとめちゃくちゃうれしそうなのとで、あんなにおもしろい動きなのに目頭が熱くなりました。
  • 「はいはいもっとぎゅっとぎゅーっと!とおいとおい!はいはいはーい!」が出てくるごとに泣ける台詞になっていきました。さいごのハッピーウェディングが最高にしあわせそうでした。
  • ユミさんとくっついたのかそうでないのかとか、上杉君とは連絡取ってるのかなとか、いろんな想像をしつつ、次はいつ会えるかなと話していた3人を思い出すとまた泣けてきます。親友を大切に思っているのは変わらずとも、仕事や家庭に重きをおくようになっていくのは当然のことで、マコトとだんだん連絡を取る間隔が開いていったんだろうなと思うと、昔の場面を思い返してただただ涙が出ました。
  • 藤原さんは登場人物同士の関係性づくりが自然で深いので、そこからまた人物の背景や過去を考えながら観て、そのぶんさらに泣いたりうれしくなったり感情をゆさぶられたり とてもします。


 

マリちゃん(高橋さん)
  • はじまりの場面で、不安そうにことばを紡いでいるのがかわいかったです。2回目に観たとき、この子がこのお話をはじめてくれたんだと思ってじーんとしました。
  • ずっと舞台の上にいて、お話の語り手としてみんなを見ているマリちゃんが、ぽつりぽつりつぶやくように言うことばがどれも印象的でした。
  • レイちゃんと糸電話で遊んだり、マコトと山岸ちゃんを見守ったりがとっても愛らしくて、台詞がないあいだの動きひとつひとつや、ハルちゃんを見ているときの表情にぐっときます。
  • 去っていくことしかできないというのがほんとうにさびしくて、でも親を恨んでいるわけじゃないのが、ふたごのまっさらな気持ちが伝わってきてつらかったです。
  • 高橋さんの笑顔がとてもかわいくて癒されました。ずっと舞台の上にいらしたので、細かな部分がとても大変だったのではと思います。レイちゃんを呼んで泣きじゃくるマリちゃんで、ただただ切なくなりました。


 

マリアさん(平田さん)
  • 優しい母親が実子を失うとどうなってしまうのかというのを、マリアさんの変化で生々しく感じました。
  • 名前がマリアというのもなにか意図が……と思ってしまいました。
  • ごめん、ごめんと繰り返すマコト(実際に声を出していたんだとしたら)を、意識の端でわかっていたんでしょうか。どうして『ごめん』なのか、お母さんはどう思ったんだろうかと考えました。
  • ハルちゃんと電話をしているマコトを、呆然としながら見ていたのがなんだか記憶に残っています。
  • 東京に行くメンバーにお母さんもいて、とってもうれしそうにキャリーを引いて笑顔なお母さんを見て涙腺崩壊しました。吹っ切れた姿が清々しくて、ほんとによかった……と思いました。
  • マコトの出生について話すマリアさんが、愛おしそうにミドリちゃんの名前を呼ぶのも涙腺にきました。
  • マー子ちゃんや山岸ちゃんと仲良く、よい関係を築いて生活していて、お母さんが笑顔を取り戻せてほんとうによかったと思いました。
  • 甘くて包容力のある柔らかいお声で、心が落ち着きました。平田さんの生のお芝居をこの作品で拝見することができてとてもうれしかったです。


 

山岸ちゃん(岩井さん)
  • とってもかわいくて、お話の清涼剤で、見ていて元気が出ました。
  • 女の子たちになぐさめられているときにマコトのほうを一瞬見て叫ぶみたいに泣いてるのがめちゃくちゃ好きです。
  • 山岸ちゃんは、高嶺の花なポジションなのに性格がすっきりしていて、気持ちのよい子だなあと思いました。
  • 大人になってマコトがハルちゃんと結婚したときも、気を遣っているような感じなのが好きでした。
  • マリアさんにとっては、山岸ちゃんやマー子ちゃんの存在は大きかったんじゃないかなと思います。明るくて元気のいい女の子が近くにいることで、とても活力をもらっていたんだろうなと思います。
  • マコトにとっても、どうしようもなくなりかけていた状態のときに再会して東京へ行くきっかけになって、そしてしばらく同居していたくらいに大きな存在だったんだと思いました。
  • 笑顔になったり怒ったり、表情がくるくる変わっていくのがかわいかったです。すらりとした手足も美しくて(ファンの方に伺ったのですがモデルさんもされているのですね)、きらきらとした明るさがこのお話には不可欠だったと思います。


 

レイちゃん(野田さん)
  • 「服、うん。服、うん。」「そっか、ごめん。そっか。」などの台詞の繰り返しのリズム感や、へんな笑い方がとてもかわいくておもしろくて好きです。
  • レイという名前も、いろいろ考えました。
  • マリちゃんと一緒になわとびをしたりごっこ遊びをしたり、たのしそうに過ごしていて癒されました。
  • 紅蒼兄妹を見て様子がおかしくなったところがつらかったです。逃げ出してごめんとマリちゃんを抱きしめるところも胸がいっぱいになりました。
  • ハルちゃんに「恨んどるわけでも憎んどるわけでもないでね、」とことばをかけるときの声が震えていて優しかったのが、とても印象に残っています。
  • レイちゃんもずっと舞台上にいて、登場人物たちを見てほほえんだりびっくりしたり、じっと見据えているときがあったり、野田さんの表情や姿勢でのお芝居の細かなところがすてきでした。


 

ユミさんほか(清水さん)
  • ミッツさんがアケミさんをひっぱたいた後、抱きしめ合って泣いてるのがめちゃめちゃ好きです。かなしいよな……はい…かなしいです……みたいなやりとりがツボでした。
  • 高校のときからマコトのことを知ってるアリワラや上杉君と、ユミさんでは、マコトを見る視点というか理解度がちがっていて、そのちがいによる言い合いの意思疎通の齟齬が好きです。うまくことばにできずうるせえばっかりのアリワラと、一般的におかしいよと伝えるユミさんと、冷静な上杉君のバランスがいいなと思いました。マコトは友人に恵まれてるなと何度も感じました。
  • ユミさんの台詞の言い方や動きからとにかく目と耳が離せませんでした。ミドリちゃんとも仲が良いと思っていたら話が合わんのよと言っていたり、マコトやアリワラにツッコミを入れるときの短い罵倒とか、海野さんにしゃーっとしたあとの戻ってくる動きとか、アホ3人をまとめてるところとか、いろいろぜんぶ大好きです。
  • ユミさんがいなかったら話が進まない部分も多くて、ユミさんが助けに行ってなかったらと思うとぞっとします。
  • マコトともしばらく親交が続いていたことになんだか安心感を覚えました。
  • 頼もしいユミさんのかっこよくておもしろいところを何度も見たくなります。


 

海野さんほか(齋藤さん)
  • 「また……あれするんで」のクールな子の名前がパピコちゃんというのをあとで知りました。かわいい……
  • 最初海野さんはミドリちゃんを好きなものだとばかり思ってみていました。マコトがどう行動するんだろうと思ってへんな汗をかいていたら、あとからストーカーということがわかってぞっとしました。
  • 「前から」と2回言っていて、ちょっと焦ってたりするのかなと、最初はミドリちゃんを(略)なので、ちょっとかわいいなとも思っていました。
  • 齋藤さんのブログを読んで、役作りについての部分でなるほど……と思いました。あのこわさは、たぶん現実にも身の回りにいる可能性があるからこわいんだろうなと思います。
  • 海野さんのあの言動から、マコト以外の人間にミドリちゃんが意図的に殺される展開もあるのか、と思ったのですが、最終的にはミドリちゃんは別の要因で亡くなることになり、海野さんはその後どうなったんだろうとも思いました。
  • ミドリちゃんと話しているときの動きやトーンが、とても自然に感じました。


 

上杉君(野口さん)
  • 「あーーー……読んだねぇ。」「うん1日で。うん。」の言い方がぽわっとしていて癒しでした。
  • アンニュイなマコトとにぎやかしのアリワラと、優しくて冷静な上杉君の3人組(と、のちに加わる頼れるユミさん)がとても好きです。
  • 上杉君が読んだ、ミドリ先生が好きな本のタイトルが気になります。
  • 車内で言い合いになっているアリワラとユミさんや、感情ががまんしきれなかったマコトの様子を見て、さり気なく声をかけているところが優しかったです。
  • アリワラが「このへん?」と訊ねても返事のないマコトに、そっとトントンとしているシーンで上杉君のやわらかさを感じました。
  • 集団行動ーー!!と慌ててるのもかわいかったです。
  • マコトと上杉君のふたりでの会話もみてみたかったなあと、ふたりだとどんな会話をするのかなと思いました。
  • 「次はいつ会えるんやろなぁ」という台詞が、このお話の中でものすごく涙腺がゆるんだ部分でした。上杉君のおだやかな声で言われたからこその台詞だなと思います。


 

マー子ちゃんほか(藍澤さん)
  • アゲハさんの味のある声がおもしろかったです。No.2のポジションだったんでしょうか。
  • 山岸ちゃんもですが、マー子ちゃんの積極的なところや明るいところ、思ったら即行動なところがマコトや周りの人を助けていた部分も多かったんだと思います。
  • マー子ちゃんが東京でどんな仕事をして、他にもどんな料理をしていたのかなと考えると元気になれます。
  • ハルちゃんが身ごもっていることにちゃんと気づいていて、様子がおかしいのにも気づいて声をかけるところが印象的というか、観察眼みたいなものが優れているところがいいなあと思いました。


 

ジロウさんほか(須田さん)
  • 見た目のインパクトもそうですが、淡く進んでいくお話のなかでの声量が良い意味でずるいなあと思いました。おもしろすぎました。
  • レストランの店員さんや野良猫もずるかったです。隣に座っていた男の人が思いっきり吹き出していて、それごと記憶に残ってます。
  • ああいうテンションの店長さんがいたらすごいだろうなと思いました。面倒だけどおもしろくて、バイトたちの性格もわかっている感じがよかったです。
  • ミドリ先生が亡くなったことを話しているときの野球部の掛け声が耳から離れません。


 

ミソギさんほか(Q本さん)
  • ヨウコさんとアゲハさんのやりとり好きです。ヨウコさんのキンとした声がおもしろかったです。
  • ミソギさんがとても、こういうお姉さんいるよなあと思うような雰囲気で、さまざまな登場人物がいる中とても安心感を覚えました。
  • 東京でのマコトの生活が落ち着いていっているようにもみえたとき、ミソギさんはじめバイト仲間の存在の距離感がちょうどいいんだろうなと思いました。
  • マコトがこわれていくときに様子を見にきていて、やっぱりマコトは周りに恵まれているなと改めて感じました。


 

アキホちゃんほか(石塚さん)
  • とてもかわいらしい声で、台詞がすっと入ってくるような魅力的なお声でした。
  • 受験を控えていていらいらしながら「しねよ!」と冗談で言っているのが、のちのちつらい台詞でした。
  • 姉を亡くしたあとマコトと話していて、「誰に文句言やいいんですか」と言っていたのと、最後に「さよなら」とかなしい声で言っていたのが泣けました。
  • MCの子も元気いっぱいでおもしろかったです。MCは出てくるタイミングや状況が状況なので、かなりシュールでした。それがまたマコトの虚無感と相まってよかったです。


 

蒼葉ちゃんほか(加茂井さん)
  • 「しねしがちでーー!」をはじめいろんな反応がかわいくて、にこにこしてしまいました。
  • アケミさんとミッツさんが好きです(2回目)
  • 蒼葉ちゃんと紅葉君の兄妹げんかの台詞がとてもリアルでした。「は?はあ!?」は何度聞いても笑ってしまいます。
  • マコトに「ばいばい」と小さく手を振っていたのがかわいらしかったです。
  • お母さんのミドリちゃんのことばを伝えるところ、「ほんとは、もっと前に、もっと長く、もっと、会いたかったって。マコちゃんに」も、このお話の涙腺崩壊ポイントのひとつでした。蒼葉ちゃんの声が優しいのも余計泣けました。


 

イチノセさんほか(市川さん)
  • ジジイが最高に好きです。野球好きの口が悪いじいさん……「おうサンキュ!!」が好きすぎて……。孫たちのことも好きだったんだろうなと思います。じいちゃんが亡くなったときほんとにかなしかったです。じいちゃんの死もマコトのきっかけのひとつになっているのが、なんとも言えませんでした。
  • イチノセさんの『ふつうの人』っぽさが、ミソギさんと同じく安心感がありました。シノヤマ君とのやりとりがリアルでちょっと笑いました。
  • マコトのもとを訪ねたとき「みんな心配してるし、店長も心配してるし」と言っていて、ああそういうふうに言っちゃいがちだよなあ……とそこもリアルだなあと思いました。
  • 結婚の束縛は楽、というのがなんだかものすごくなるほどと思いました。


 

紅葉君ほか(ホリさん)
  • ふたごだとしてもお兄ちゃんというものは大変なんだな……と、うつむき気味に妹を窘めたり叱ったりする姿にがんばれ、と思いました。
  • マコトと仲良くなって、サッカーして遊んでいるのがかわいかったです。蒼葉ちゃんも一緒にいるのがほっこりしました。
  • 引っ越すことを伝えるときのさっぱりした言い方が、マコトの心情と真逆な感じがしてそれがむしろよかったです。
  • 紅蒼兄妹に出会えてああして遊ぶことができたのが、マコトもうれしかったんじゃないかなと思いました。


 

岡本さんほか(岸田さん)
  • 個人的にこんな先輩いたらいいなあと思いました。相談に乗ってくれたりいろんな話をしてくれたりして、そして適度な距離感が心地良い感じでした。
  • 海野さんのことあたりもどれくらい気づいていたのかなと思いました。
  • はみがきしているときの立ち姿、スタイルが良くて見とれました。ランチのときとはみがきのときの話が、それぞれマコトとミドリちゃんのことにもつながっているような気がしました。
  • 泣いている山岸ちゃんに駆け寄っていた女の子も、とても好きです。


 

シノヤマ君ほか(中三川さん)
  • 見ていてあっちょっといたいたしいかなというぎりぎりの感じがおもしろくて、ここでも隣のお客さんが吹き出していました。
  • マコトの地元のバンドがださいとしれっと言ってしまえる感というか、自分はふつうじゃないということに誇りをもってる(?)ところににまにましてしまいました。
  • でもたぶん悪い人ではないんだろうなと、マコトとしゃべっているあたりで感じました。
  • だからマコトの家へ訪ねていかないあたりも、シノヤマ君なりのなんらかの考えなんだろうかなとも思いました。


 

川田さんほか(木村さん)
  • 川田さんも、同僚にいたらたのしそうだなあと思いました。
  • 「あちちちちだね、あちちちち」にだれもつっこまないのもおもしろかったです。ちょっと天然な感じがかわいいです。
  • ユミさんにアドバイスしているところ、優しさが自然でとても好きです。
  • MCの「ひのまるっ!」が、あの状況のあのタイミングで言われたことに思考がおいてかれる感を味わえたのもまたおもしろかったです。


 

イツキ君ほか(山脇さん)
  • 個人的にいちばん『ふつうにいそう』感がつよいのがイツキ君でした。
  • お酒を注文するときにマコトに何か食べます?って聞いてたのがとても日常っぽくてほっとしました。
  • 良い意味でお芝居っぽくないというか、ほんとに身近にいるふつうの人という感じがして、あの店長さんとある意味めんどくさそうなイチノセさんとシノヤマ君がいて、日々大変そうだな……とも思いました。
  • MCの人はただただいらっとして、一瞬同じ人とはわかりませんでした。役柄に合ったナチュラルなお芝居をなさる方なんだなあと思いました。


  

衣装
  • マコトのまっ黒なシャツ、あぶくのようなまるい形が背中側にしかないのがもの悲しかったです。
  • ミドリちゃんの胸のあたりにあぶくがたくさんあるのも、いろいろ考えてしまいました。
  • 登場人物の性質に合ったデザインがすてきでした。ハルちゃんのスカートとパンツが合わさった形や、山岸ちゃんのロングスカートがシースルーになってるのがとてもかわいかったです。


 

音楽
  • 風鈴の音が鳴る場所をもっと覚えておきたかったです。
  • ぽこぽこぶくぶくの音に癒されました。
  • 本当に必要なところにだけBGMが流れていて、それがとても優しい音で心地よかったです。
  • なので余計に、妹のミドリちゃんが亡くなったときの曲が耳から離れません。選曲の理由をものすごく知りたいです。
  • 終盤に流れるぼうっとゆらいでいるような曲が、おだやかなのに無性にかなしくて、大好きです。


ぐだぐだ長々と申し訳ございません。
つぎつぎに水泡がうかんで消えるような、それを止める術なく見続けている人のお話のような、ふしぎな感覚になる舞台でした。
その中で、それぞれの役者さんの持ち味がたっぷりたのしめる2時間10分でした。
ほの暗くてあたたかくてかなしいお話を、ありがとうございました。