砂岡事務所プロデュース『変わり咲きジュリアン』感想メモ
8月下旬に行われた『変わり咲きジュリアン』の感想です。
まったくもっていまごろ感想を書くのも非常に、どうしても野暮になってしまうから、と思うのですが(ほんとのほんとに野暮すぎるのですが)己の備忘録として残しておきたいと思います。
以下かなり個人的な感想です。さまざまな誤り等どうかご容赦ください。妄想甚だしいです
日本語壊滅・おなじことばっかり書いてあります。時系列ははちゃめちゃです。
ときどき加除訂正します
(9/30 コピペしたのがぬけてたので音楽の部分などちょっと追記しました)
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誠一のおもいでの夏は、ひりつくような やわらかい時間でした。
死を前にした人間がこんなにおだやかで凪いでいるものなのかと、誠一のもつ空気感というか性質に 初っ端から静かに衝撃を受けて泣きそうになりました。
誠一がもともともっている性格が大きいんだと思いますが、ただ暗そうとかいうだけではなく、この最初に感じたほのかなあたたかさは話のさいごまでずっと続きました。
傍若無人というか、人を食ったような、失礼の権化というか、ああいった生業をしているにもかかわらずああいった勢いの死神に目を付けられても、なでられるのを鬱陶しがる猫のような物腰で付き合っている誠一の姿が印象的でした。
はげたかとしゃこを検索してものすごくなるほどと思って笑いました。
その一方、もし榎本が声をかけていなかったらと考えました。あのむりやりけしかけるデリカシーのなさと にくめない愛嬌が、フラットな(そうならざるを得ない現状の)誠一の感情と記憶をすこしずつ動きのあるものにしていったのかなと思いました。
榎本と関わっていなかったら誠一はあのまま、いろいろな人や出来事を思い出すこともなく、誰に再会することもなくさいごの時を迎えたのかもしれないと思うと、そして元来の大人しい性格を思うと、榎本の遠慮のないむちゃくちゃな言動に振り回されたことが逆にとても良い影響になったのではないかと思いました。
誠一の記憶を、粗雑に見えて慎重に引っぱり出そうとしている榎本や、その榎本のことばで自分のつぎの行動を決めている誠一のバランスがとても好きです。
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ジュリアンと誠一の対比があざやかでした。
靴をぬいでかばんに入れ、手をさしのべたジュリアンをじっと見て手をのせる誠一が、つぎの瞬間なになになになに!?となるところが大好きです。
幼い誠一はジュリアンに引っぱられるように、現在の誠一はジュリアンの外側を走るのが、過去と今が混在しているようでした。
不幸のすごろくがジュリアンの人生をつくっていることがわかったとき、とても人間らしいなと思いつつ心苦しくなりました。
悪いことが起きたときの心の準備をしておくため、ひとりで苦しみながら賽を振っていた期間が長くてつらそうでした。
ジュリアンに寄り添うように、一緒に遊びたいと伝える誠一の行動の理由を考えたとき、性格を念頭におきつつ、榎本のいうように初恋の人だったから(恋という範疇の感情より広いような)なのかもしれないと思いました。
幼い頃に打たれた記憶が薄らいでいるということが意外で、でもそれは相手を思っているからだということと、相手の傷を無意識に理解していたからなのかとも思いました。
誠一のもともとのやさしさと、ある種達観している部分と、相手を好きで大切にしたいという気持ちと、いろいろな感情がやわらかく重なって、ジュリアンの傷をおおっているように感じました。
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両親のいない誠一にとって白瀬さんの存在は大きかったんだろうと思います。底抜けの明るさで愛情深く接してくれて、虫とりの遊びも声をかけてくれて、あたたかく包んでくれる人だということにほっこりしました。
三春ちゃんの物の捉え方に対して「父ちゃんが間違ってた」と言えるのが、白瀬さんのとてもすてきなところだと思いました。
三春ちゃんの誠一に対する気持ちもやさしかったです。小さいのに筋の通った考え方をしていて、誠一と対等であろうとするところや、自分のことに対する意思もとても心地よかったです。
ジュリアンのことを白瀬さんに黙っていた三春ちゃんが本当にほんとうになんという考えをもっている子なんだろうと毎回泣かずにいられませんでした。
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踊りがきれいだったと言ったり、早々自分が長くないことを告げたり、死後の始末を三春ちゃんに頼んだり、次々と思いを伝えている様子が、20年の空白を感じさせないというか誠一にとって白瀬家は今でも家族だったんだなと思いました。
榎本に「最後に友達ができてよかったよ」と伝えたところも、素直で、自分以外の人間に対する気持ちがきちんとととのっている人なんだと思います。
だからこそそのことばたちの意味が相手に深々としみこんでいっているようにも感じて、誠一のことばを聞いた相手の表情にいつも目を奪われました。
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先輩の死を語るとき、思い出が榎本の頭の中からじわりとにじみ出ていて、いつもは飄々としている顔つきがうつろになる瞬間があって、その姿を宥めるでもなく受け止めている誠一も含めてとても心に残る場面でした。
過去と現在の境目がはっきりしつつどこか曖昧で、現在の榎本の目に映っている先輩の姿が切なかったです。今まで先輩の話を誰かにしたことがあったんだろうかと、死を前にした誠一に話したくなった・先輩のことを思い出した理由を考えて、死神のもつ傷は小さいけど深いのかもしれないと感じました。
榎本がこの仕事をしている理由や、さまざまな言動の理由もいろいろ考えましたが、長くなるのでやめます。
はじめこそ死神やらしゃこやらと称された榎本ですが、最後に誠一の友人として再びアパートへ「かならず来てくれよ」「みとどけてほしいんだ」と声をかけられて、なんとも言えない表情になっていたのが忘れられません。どんな心情だったんだろうと考えが尽きない部分でもあります。
ありがとうと言われて、誠一と三春ちゃんを撮影せずに俯いてのどを震わせていた榎本が、絞られるように「撮りたいのは今なんです」と言ったのも、撮りたいという思いだけでなく、もしかしたらどこかに誠一とジュリアンに再会してもらいたいという気持ちがあったのかもしれません。その気持ちは観客もその瞬間までは同じで、でもその思いは他者のエゴだなと思いました。誠一とジュリアンにとっては『今会うこと』が一番大切なことではなかったんだなと思い、もどかしくなるのと切ないのとでたまらない場面でした。
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大人になった三春ちゃんが最初頑なに帰れと言うのは、過去を思い出すのがつらいと知ってるからなのかなと思いました。
お父さんと楽しくごはんを食べているときに、三春ちゃんの今が重なるところは涙なしに見られませんでした。
誠一にも会えなくなって、お父さんもいなくなってしばらくしたところに、20年振りに誠一に会ったと思えばもう長くないと伝えられた状況は、想像がつかないくらいの苦しさだと思います。
幼い誠一と三春ちゃん、今の誠一と三春ちゃんの声や心情が重なりながらのやりとりは、お互いの思いをしっかり伝え合っていて、心揺さぶられました。
誠一がジュリアンに会うのを手伝う三春ちゃんの人の良さは、昔と変わっていませんでした。
片付けを頼む誠一と、頼まれてわかったとだけ返した三春ちゃんの短いやりとりのあと、「またね」と言える三春ちゃんがほんとうに…あれが直接かわした最後の会話だったのかと思うと、言葉になりません。
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最初「修五のところに帰るくせに」と言っていたのは、好きな人が彼のいるところに戻ってしまうのがさびしいとか悔しいとかの感情かと思ったのですが、修五に殴られていることを知っていた状態だったらまた違った意味になるなと思いました(このへんの時系列がよくわかってなくてすみません)
「嫌がったのはジュリアンじゃない、自分かもしれない」と言っていたのも、自分が行くとジュリアンが苦しむと思ってのことだったのかもしれません。
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修五は見ていてとにかくつらそうでした。
誠一と笑顔でふざけあったり一緒に遊んでいるところがとってもかわいかったのですが、そのときは心から楽しんでいるとして、多分とてつもなく生きづらいのではないかと感じました。
零を殴ってしまったあと、泣いているのを隠すように誠一に明るく声をかけているところに胸がしめつけられました。
ジュリアンにひどいことをしているんだから、誠一が修五に嫌な感情を抱いていてもおかしくないと思うのですが、殴ったあと泣いている修五を見ても騒いだりせず相手の気持ちをだまって考えているような誠一にも涙が出ました。
六実ちゃんと結婚することを零に伝えるとき、零が平気なふりをしてドライな返事をしたのを見て、悔しいような悲しいような顔をしていたのが泣けました。
六実ちゃんはまだ子どもであって自分のことで精一杯という感じがしました。住む世界を間違えてしまうとこういうことになってしまうんだろうなと思ったり、まだ大人の世界で生き抜く力や考え方が身についていない感じもしました。
ジュリアンも、修五も、六実ちゃんも、それぞれ別の生きづらさを抱えて生きているんだと思いました。
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誠一と同じくらい、白瀬さんはやさしい人なんだと思います。
常に誰かのことを思っていて、それが大人でも子どもでも対等で、ほんとうにすてきな人でした。
三春ちゃんを残していくことになってしまったのがとてもつらかったでしょうが、自分の娘を信じて「大丈夫」と言っていたのが泣けました。
残された三春ちゃんは、誠一の死まで一緒に抱える形になってしまうのですが、やっぱりそれでも大丈夫と言い切れるいい意味でざっくりとした気持ちのよい信頼関係がすてきでした。
白瀬さんとお酒を飲むことができて、誠一はきっととてもうれしかったでしょうし、お互いが立派だったと言い合える存在にあの場所で会えて、見ている側もほんとうに満たされた気持ちになりました。
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誠一は幼かったから、ジュリアンや広島のことをいい思い出として記憶しつつ、靄をかけたまま大人になりましたが、ジュリアンは大人として大人の記憶の状態で20年を過ごしてきました。
同じ期間でも、その差による苦しみはまったく種類や程度の違うものだと思います。
ジュリアンからみた誠一の存在や20年間のことにについて考えると、目が回りそうになります。気の遠くなりそうな思いをしたんだろうと想像してしまいます。
そのことも誠一はあのとき理解して、あの結果に至ったのだと思いました。
終活の第一志望はジュリアン、という中盤の台詞を思い出して、このおわりの流れの意味をずっと考えていました。
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回想するときは「とっても楽しかったです」と叫んでいた誠一が、さいごにジュリアンに宛てた手紙を読むとき やっぱり表情や声が凪いでいて、ジュリアンの姿を目にすることも直接ことばを交わすこともありませんでしたが、会って話す以上の意味があって それが二人にとってはとても大切なことだったんだと思います。
会わないという選択とさいごの手紙に、20年前の誠一と変わらないやさしさを感じました。
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新幹線のシートは、会いたい人に会える場所なのかなと思いました。
窓の外の風景がめまぐるしく過ぎていって、列車の中はおだやかに時間が流れていて、ふと思考を巡らすと隣に会いたい人が座っている、そんな場所かなと思いました。
↬ メモ
⚀
- ほかには何も望まないから、はじめからなかったことにしてほしい という望み
- new、acad、emyのときのスクリーンの音と静寂
- 踊るジュリアンを見てるときの目
- スマホじゃダメなんだああいうのは。
- ジュリアンが口遊んでいた歌を現在の誠一も歌ってる
- ステージ上のジュリアンの姿を高いところでいつまでも見てる
- やだなー!明日が来なけりゃいいのになー。
- 銭湯は「世界一楽しいところなんだよ」
- 記憶と現実が曖昧になりながらジュリアンのもとに向かうところ
- 落ち着いた抑揚の、あたたかくて深みのある声
- 打たれるのは痛いよね
- 榎本にしなだれかかられて鬱陶しそうに腕を退ける
- ソファに気怠げに体を投げるところ
- 時々死ぬことについての考えをこぼす
- 三春ちゃんの洗濯物を丁寧にたたむ
- 「お前には会えた。おじさんにはもうじき会える」
- 小さい頃裸は見たし、の素っぽさと三春ちゃんの目つきと榎本のため息
- 「最後に友達ができて」ということばの重さ
- 自分の死期にあっても誰かを優先したり思ったりする
- 誠一という人物の人柄と行動と最後を見ることができてよかった
⚁
- 誠一を抱き上げたり頭をわしゃわしゃ撫でたりするときの最高な笑顔
- タバコの匂いがものすごく白瀬さんぽいタバコ(?)
- 子ども相手にも非を認めて爽やかに謝れる大人、子どもと対等に話せる大人
- 圧倒的な包容力
- 誠一宿題やったのかー!
- 三春ちゃんの手料理をかき込む父 あのシーンがかわいすぎて、ほんとにいい親子だなぁと思った直後の涙腺崩壊
- 虫捕りの話が最高 蝶の良し悪しがわかる=品がいい
- まさか、泣いてんじゃあるめえな!偉そうなこと言ってごめんなさい!!
- 新幹線でビール、大人だから楽しめるし、誠一に会えて白瀬さんもうれしそう
- さいごに誠一と飲んだビールの匂いもすごく白瀬さんぽくて泣ける
- なかなかどうして大丈夫だっぺ!
- ざっくばらんな、気持ちよく大仰な、突き抜けて明るい白瀬さんというおじさんはこの物語に必要不可欠
- 白瀬親子大好きすぎる
⚂
- かなしいのとかわいそうなのは同じこと?
- 誠一の絵日記にぜんぶツッコミ入れてるのがめちゃくちゃかわいい「オスならええよ…?なんでメスなん!?」最高
- 帰る誠一を見送る三春ちゃんの涙
- 料理を振る舞う気持ちがやさしい
- お父さんとふたりでごはんを食べているところに大人の三春ちゃんがコンビニ袋持って現れて涙腺崩壊した
- ダンスがかっっっこいい かっこよすぎて夢中になって見てしまう
- 誠一が来たから夏休み
- 白瀬さんとほんとの親子みたいに見える
- いちばんしんどい立場にいるんじゃないか
- 「「笑えんよ誠一」」
- 再開直後は拒否してたけど、だんだん三春ちゃんのやさしい部分が出てきてて大人になっても変わってなくて泣ける
- あの場面で「またね」と言える三春ちゃんの心のまっすぐさ
- ちいさい頃の三春ちゃんも大人になってからの三春ちゃんも大好き
⚃
- 実にいい・青とか紺とか寒色の誠一と真っ赤なジュリアンの対比がきれい
- ものすごく失礼なデリカシーゼロの人なのに憎めないところがあるのがにくい
- 誠一と似てるところ、考えが同じ部類の人間(不幸自慢⇄理解もある)
- 糸屋『さん』と榎本『くん』
- 黒い紙に墨を垂らしても面白いことはなにもない
- 記憶をひきだすときの言葉選び
- 白瀬さんが登場したときとカエルの鳴き声のときの顔
- ジュリアンが脱ぎはじめて!?となりつつ、舞台を見続ける誠一の腕を引っぱって降りる
- 「何を!?」「……は(ふぁ)い?」
- 貧乏ゆすりしながら次の動きを待つ
- 先輩の影響・撮ってやろうと思う、撮りたい の範囲
- タバコをいじる
- 瞬殺の腕相撲が痛そう
- 「糸屋さん観ます?野球。」「……」「…ん?」
- 「新幹線が速すぎてタイムスリップしちゃったかな」
- 誠一の記憶や感情の靄をはらっていたのが、誠一に感情を揺さぶられている
- いろんな冗談が冬にはつらくて大事なものになっていそう
- 「僕……?」「わかりました」
- おとなしくて控えめな彼らしい最期をどう看取ったのか
- 最後の年が明けてからの録画、すぐに撮らなかった理由・録画は誰に向けてのものか
⚄
- きっかり2週間
- なんでもええよ!よくないわ!のリズムの良さ
- 自分でどうにもできない状態に見えるのがつらい
- ジュリアンを見つけて今度こそ、と思ったのかもしれない
- でもやっぱりだめだった、だから泣いてるように見えた
- 修五とジュリアン、修五と『零ちゃん』
- 白瀬さんとの関係性
- 誠一のことをどう捉えてたのか、かわいいガキと思ってたのか、どこかですこし妬いていたのか
- 誠一を抱っこして降ろしてあげたあとの頭わしゃわしゃが泣ける
- 六実ちゃんとは幸せになれたのか
⚅
- まだ学生のような心の持ち主
- 歳をとれば変わるものなんだろうか
- 感覚とアウトプットがまっすぐすぎて不安定
- 歌声がとてもとてもきれい…ジュリアンとのハモリがすてきだった
- 学生から大人にへんなふうにとびこえてきてしまったがための、普通の幸せということば
- 修五と一緒になったのもなんとなくだけどよくわかる、幸せになっていってほしい
◽︎
- 何も着たくなかった→黒い服→赤い服→混在
- 浮世離れしてるような雰囲気をもっているけどとても人間味があふれてて、とがっているような気もするけどやわらかい
- ひとりで家族みたいって喜んどった!
- 早くあがってはいけないすごろくをやる仲間
- 見目も相まって美少女が気怠さをまとっている色気がうつくしい
- 誠一と出会っていなかったら、まだひとりで不幸のすごろくをやってたんだろうか
- 神秘的で妖艶な、夢のような存在にも、苦しみや抜け出せないつらさがある
- 『新山零』という名前を知った途端、ものすごく身近な存在に感じられた
- 修五に暴力を振るわれてもそのままなのが意外だった
- 誠一と会わなくなってからのジュリアンを想像するとつらくなってくる
- 誠一が会いたがらなかった(と伝わった)んだとしたら、それを知ったときどう思ったのか
- インターホンが鳴ったときのジュリアン
- 手紙が届いたとき、どうしたか
- ジュリアンにとって、零にとっての誠一について
♬
- 舞台がはじまる前にミシェル・ルグランの曲が流れていてすてきでした(アフタートークのときのキャラバンの到着がかっこよすぎて震えました)
- 双子姉妹の歌などが流れているときに、舞台上のお姉さんたちが笑いながら小声で話されていて、うつくしいしかわいいしで眼福でした。
- 生演奏の音合わせで一気に心拍数が上がりました。
- 役者さん方のお声もですが、生音が直接鼓膜に響く圧力(?)はとても心地良いです。
- カホンと口笛の音と、取材の人たちと、虫とりする誠一のシーンがとても好きです。
- かえるやせみの鳴き声、インターホン、運動会のピストル、機内アナウンス前の音などなど、耳にも楽しかったです
- ジャズがめっぽう好きなものでダンス曲が最高の一言に尽きます。ほんとに最高でした
- ラジオ体操っぽい曲も好きです。場面によって調の長短が違ってるのも好きです
- パノラマ記憶のところの曲が、最初は不協和音ぽかったのがラストではちょっと長調が入っていて、あたたかみのある音の響きに号泣しました。誠一と関わることで榎本の心の中も変化したのかなと思って泣けました。
- 生演奏の醍醐味で、ピッチがわずかに上ずったり下がったりするのが好きすぎました。もともと個人的にちょっと上めにチューニングしてあるのが好きなのでとても大好きな音でした。最終日はそれまでとちょっとちがって下めで、それがジュリアンの気怠げな感じと合ってるしめちゃくちゃセクシーだしで、どちらの音も最高でした。
- ガタンゴトンのリズムでCの音が響くところからはじまるピアノ曲が、この物語のテーマ曲のような、誠一の原風景のように思えました。
❤︎
- はじまる前からお姉さんたちの美しさに見とれました。脚が長い…笑顔がすてき…スタイル抜群…衣装かっこいい…髪がきれい…声がかわいい…美しい…(エンドレス)
- いろいろな方々がいろいろな役を演じられていてすごかったです。それぞれにかっこよさやかわいさや儚さ、威厳、面白さ、そしてとにかくリアルさがあふれてて目が足りませんでした。
- やりとりが自然な部分が多くて、会話の流れがすっと入ってくるので、ほんとうに今ここに実在している人物たちのように感じて、無意識に言葉をかけそうになったりもしました。
- 三春ちゃんのお店のボーイさんの間の取り方がめちゃくちゃ好きです。
- 誠一のおばあちゃんのふわっとした雰囲気が大好きです。かわいいおばあちゃん…お若い…誠一のことを大切にしてるのがわかって癒されます。
- 台詞の言い回しや使われていることばがとてもきれいですっきりしていて心に残りました。きれいなまま大切にして、記憶に留めて覚えておきたいなと思いました。
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夏のあと、12月20日に榎本はどこでどう過ごしたのだろうか、newacademy0309のパスを入れて誠一をはじめからなかったことにしたのだろうか、電話がつながらなくなったとき、部屋を片付けに行ったときの三春ちゃんは、手紙を受け取ったジュリアンは、と考えると、たまらない気持ちになります。
✤
何かを成し遂げなくちゃと言われて、誠一は大切な人に『会わない』という選択をしました。
これが最後のチャンスだから一目だけでもとか、会って思っていることを伝えたいとか、ふつうならそう思ってしまいそうですが、それでも会わない理由はジュリアンの気持ちを考えてのことで、さいごのさいごまで誰かのことを思って自分の行動を決めている誠一に、なんという人だ…とやさしさの厚みに圧倒されました。
20年経っておぼろげになった記憶を巻き戻して辿っていくことができて、誠一は人生を終える前に大切な大切なことを成し遂げることができたんだと思います。
ジュリアンのもとに誠一の気持ちが届いて、遺書の意味をこえて、あたたかな手紙に 長い苦しみがときほぐれていくといいなと思いました。
走馬灯のなか、ジュリアンの声を聞いて窓の外を眺める誠一が いまでも脳裏にうかびます。
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直接関係ないことですが、冒頭、話がはじまる前に流れていた『夢見るロラン・カサール』=『Watch What Happens』と考えて和訳を目にしたとき、胸がいっぱいになりました。
ジュリアンにとっての走馬灯が、この歌のようでありますようにと祈りたい気持ちになりました。
⇝ ⇝ ⇝
息が詰まるほどの暑さの夏、登場人物たちのもつ傷の痛みを感じながらも、しみた傷口が丁寧に癒されるような物語でした。
もうだいぶ涼しくなりましたが、未だに8月のあの場所にいる感覚です。友達とも物語や人物について しんしんと話していて、思うことが尽きません。
糸屋誠一という人物のさいごの数ヶ月を見ることができて、ほんとうによかったです。
やわらかな靄の中の、やさしい夏のひとときを ありがとうございました。
とっても 楽しかったです。